第16回「いっしょに読もう!新聞コンクール」表彰式を開催

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日本新聞協会は12月13日、第16回「いっしょに読もう!新聞コンクール」の表彰式をニュースパーク(日本新聞博物館、横浜)で開きました。小中高各部門で最優秀賞を受賞した行田市立桜ケ丘小学校5年の篠塚いろはさん、東京学芸大学附属世田谷中学校1年の服部陽有人さん、東福岡高等学校2年の清武琳さんに賞状と盾を贈りました。受賞者は、それぞれが選んだ記事を執筆した記者と懇談し、記事に込められた思いに触れました。

新聞記事を通じ生涯学び続けて

表彰式の冒頭、新聞協会NIE委員会の坂口佳代委員長(毎日新聞社)が「応募者がコンクールを通じ新聞に出合い、知らないことを学ぶ楽しさを感じたり、他の人の考えを知ることの大切さに気が付いてくれたのであれば、新聞の作り手の一人として、大変うれしい」とあいさつしました。

続いて、来賓として出席した文部科学省初等中等教育局教育課程課の上月さやこ教科調査官は、各作品の社会課題に対して自らの役割を考え、行動につなげようとする姿勢に大きな感銘を受けたと述べました。新聞記事を読んで知識を得、家族や友達との対話の中で自分の考えを深めたうえで意見や提言、提案にまとめるというコンクールの取り組みは、主体的で深い学びによって、自らの考えを形成していくプロセスだと指摘。「不確実性が増す社会において、流れてくる情報が信頼できるのか、自ら考え、判断する姿勢が不可欠となる。新聞が情報を取捨選択し、活用する力を育てる身近な教材となることを期待している」とお祝いの言葉を贈りました。

最優秀賞受賞者への贈賞の後、小原友行審査委員長(日本NIE学会顧問、広島大学名誉教授)は審査を振り返り、今年の応募作の傾向を次の三つのキーワードで総括しました。

「ニュースの喜楽」=喜びや楽しみ、温かさを伝える記事を選んだ作品

「未来への志」=社会や地域をより良くしたいという志へと高めた作品

「自己肯定感」=ニュースを通じて自分の役割や存在価値を考え、それを自ら高めようとする姿勢がみえる作品

そのうえで、最優秀賞の3人に「受賞をスタートラインとして、これからも、より良い未来を創造するために志を持って生涯学び続けてほしい」と呼びかけました。

受賞者と記者が懇談

小学校部門最優秀賞の篠塚さんは、コメ不足やコメ農家の高齢化を取り上げた記事を選びました。記事を執筆した読売KODOMO新聞の山口優夢記者は、記事を読み祖父母のことを思い浮かべたという篠塚さんに「読んだことを身近な人につなげて考えてくれたことがうれしい」と伝えました。実際に祖父母の田んぼを見た時の感想について聞かれた篠塚さんは「黄金色に輝いてきれい」と感じたと答えました。

山口記者が俳人でもあることを知った篠塚さんからは、表彰式の様子で一句詠んでほしいとのリクエストがありました。山口記者は「小春日や 大人ばかりの 会議室」と詠み、会場となっている会議室が大人ばかりで緊張していると思うが、全員が小春日のように温かな気持ちで、篠塚さんを祝福していると解説しました。

中学校部門最優秀賞の服部さんは、聴覚障害者が笑顔で接客する店(サイニングストア)の記事を選びました。執筆の経緯を聞かれた中日新聞社編集局生活部編集委員の有賀博幸記者は、記事に登場するココトモファーム(愛知県)の社長が掲げる「誰ひとり取り残さない居場所をつくる」という考えが、自らの取材テーマの一つであるSDGsに当てはまったことがきっかけと話しました。お店を取材すると、表情豊かな接客で、お客さんも笑顔になり、自分まで嬉しくなった気持ちを記事に込めたといいます。

普段、どのような記事に興味を持つか聞かれた服部さんは、一番に4コマ漫画に目を通すとしたうえで、特に生活・暮らしに関する記事が面白いと答えました。「記事は高齢者や女性など自分と異なる立場の視点で社会を切り取っている。新聞を読み始めて、自分では想像できなかったことを立ち止まって考えることができるようになった」と振り返りました。また服部さんは、有賀記者が服部さんの受賞に寄せたメッセージを読み、当初はサイニングストアを知らなかったと書かれていたことに驚いたと述べ、「記者はなんでも知っていると思っていたが、知らないことに出合うことを面白いと思えるところがかっこいい」と伝えました。

高校部門最優秀賞を受賞した清武さんは、付き添い入院を取り上げた記事を選び、保護者として付き添い入院の経験を持つ知人と意見交換しました。最優秀賞に選ばれたのは、小学5年生当時に続き2度目。自らの入院経験に基づく作品などを度々応募しています。

記事を執筆した西日本新聞社報道センターの野村創記者は、読者投稿をきっかけに、自身の子供が長期入院した経験を持つ記者らでチームを組んで執筆しました。取材を通じて、国や病院も現状を変えようとしていることが分かったものの、問題の解決は難しいとも感じたと語り、付き添い入院にまつわる課題に対する社会の関心を高める必要を感じたと話しました。

当事者として、付き添い入院の負担軽減への意見を求められた清武さんは「医療費の補償制度は整ってきたが、付き添いによる親の失業対策や休業補償の充実も必要ではないか」と述べました。

表彰式終了後、ニュースパークの館内見学ツアーが実施されました。