第16回いっしょに読もう! 新聞コンクール受賞作

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東京都 東京学芸大学附属世田谷中学校 1年 服部 陽有人さん

意見を聞いた人:祖父

記事見出し

聴覚障害者 笑顔の接客(東京新聞 2025年4月23日付朝刊)

授賞理由

聴力の低下とともに団らん時の口数が減り、笑顔も力なくなってきた祖父のために何かできないかと考えていた服部さん。聴覚障害者が笑顔で接客する洋菓子店を取り上げた記事が目に留まった。

祖父の話から、祖父が抱える困難には、会話が聞き取れないときに聞き返すことで相手も疲れてしまうのではないか、と声かけを控えてしまう「気持ちの面の辛さ」もあると気づいた。記事を読んで、声を発する代わりに、身振りや表情など各々ができる方法で作り上げる会話が温かいコミュニケーションを生むことを知り、身体を含む豊かな表現で会話の垣根をなくすことができるのだと思い至った。

聴覚障害を抱える家族に寄り添うなかで記事と出合い、当初の「補聴器の性能を上げればよい」との考えから一歩進んで、コミュニケーションにおける発想の転換で優しい世の中を作り出せるとした提言性が高く評価された。

(1) 記事を選んだ理由、記事を読んで思ったこと、考えたこと

僕の77歳の祖父は、60歳を前に聴神経腫瘍を患い、右耳の聴力を失いました。今では左耳の聴力も弱まり、補聴器が手放せない生活をしています。家族思いで、変わらずいつも元気な祖父ですが、親族が集まって食卓を囲む時に口数が少なくなり、笑顔にも少し力がないように見えることが増え、僕に何かできることはないかと思っていた時、「聴覚障害」「笑顔」という見出しのこの記事に目が留まりました。

(2) 家族や友だちの意見

祖父は「話を聞き取れない時に聞き返すと、話し手も疲れてしまうと思い、返事をもらわなくていいよう、極力自分から話しかけないようにしている。記事にあるように、店員さんもお客さんも温かい気持ちで、各々ができる表現でコミュニケーションをとれると、人とかかわる自信や楽しさが生まれるよね」と話してくれました。

(3) 話し合った後の意見や提案・提言

僕は、聴力を補うために「補聴器の性能を上げたらいいのではないか」と安易に考えていました。しかし祖父の話を聞いて、耳が聞こえないことは、物理的な不自由さ以上に、周りへの配慮から行動を制限してしまうという、気持ちの面でのつらさがあるのだと気付きました。そして、この記事の「お客さまが店員に合わせていただく。逆転の発想です」という言葉と、サイニングだけにとどまらず、身ぶりや表情を音声言語の代わりにして心を通わせている様子にハッとしました。それぞれができることを発揮し、一緒に創りあげていく会話は、音声に頼る会話より、血の通った温かいコミュニケーションだと思います。祖母も「サイニングストアのように、発想の転換で、誰もが積極的にかかわり、活躍できる優しい世の中になるといいね」と話していました。僕も、できる限り豊かな表現で会話の垣根をなくし、祖父の自然な笑顔を引き出せる存在になりたいです。