“先生”体験から考える

子どもと社会結ぶ「窓」に

 授業で新聞を活用している中学校や小学校の先生たちに教科書にはない新聞の魅力を尋ねると「身近だったりタイムリーだったりする新聞記事を使うことで子どもたちの関心を高めることができる」「いま生きている人の姿を伝える新聞記事は生徒の心に響く」などと強調する。

 中でも「さん太タイムズ」を使う理由は「子どもたちにとって新鮮で興味のわく記事が多い」「見出しや記事が分かりやすく読みやすい」「5W1Hがはっきりした記事が見つけやすい」などという声が目立つ。

 一方で「良い文章であっても語彙が難しすぎる記事もある。分からなければ読む気にならない」という指摘もある。「行事の記事ばかりでなく人の生き方を紹介した記事、ニュースの背景などの分かりやすい解説、記者の思いが伝わる記事などを載せてほしい」という声も聞く。

 現在、文部科学省の中央教育審議会で次期学習指導要領改訂の動きがある。「生きる力」を育むことを目指し、現代的な諸課題に対応する資質・能力が育成されることなどが重視されている。教育と社会をいかに結びつけるか、新聞の果たす役割は大きい。

 以前、子ども記者を経験した女子中学生が「新聞は、私と社会をつなぐ『窓』。さまざまな人の生き方や考え方が分かり視野が広がる」と話していたのが印象的だった。アクティブ・ラーニングの充実へ向けて、記事を読み比べたり、読んだ記事をもとに自分の意見を書いたりする取り組みが増えるだろうという学校現場の声もある。

 “先生”体験などを通して、新聞が必要とされていることをひしひしと感じている。今後も、読者の声に謙虚に耳を傾けニーズをすくい上げ、より読みやすく分かりやすく親しみやすい紙面づくりにこだわっていきたい。

筆者・プロフィール

瀬尾 由紀子(せお・ゆきこ)
山陽新聞社 読者局NIE推進部長

「新聞研究」2016年11月号掲載
※肩書は執筆当時