“先生”体験から考える

記者は「厳しくて地味な仕事」

 2018年1月、横浜市の公立中学校に招かれ、職業講話(キャリア教育)を行った経験から得た確信です。他の講師には、フランス料理のシェフや動物園飼育員など多彩な職業人が並んでいました。新聞記者の仕事を選んだ生徒は12人。110人いる1年生のうち記者コースは最も希望者が少ない分野でした。しかし、この12人は文章を書いて世の中にかかわる仕事に興味を抱いている子どもたちです。私の不器用な話に真剣に向き合ってくれました。実は「文章を書く仕事」を志望する子どもは意外と多いのです。実際、彼らが寄せてくれた感想文を読むと、文章や字体の美しさに驚かされます。

 受講した生徒に「新聞記者の仕事をどう思いますか」と問うと「厳しくて地味な仕事」と答えました。ひたすら情報を集め、裏を取り、活字に表す姿は、今の子どもたちにとって華やかさとは無縁と映るのでしょう。情報はインターネットで楽に手に入る時代と感じているのかもしれません。「記事を書くのに複数の情報源にあたり、裏を取る作業を行っていることに感動しました」。感想文で一番、多かった意見がこれでした。

 私たちの世代が「時代の先端」と感じていた記者像とはもはや違います。しかし、記者職に関心を抱く子は必ずしも華やかさを仕事に求めていません。「人とのつながりを持てるところに魅力を感じます」と語る子どもが数人いたことに驚きました。イメージではなく現実としっかり向き合っているのです。

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