“先生”体験から考える

「提案授業」で先生にアプローチ

 こうした出前授業は、週刊こども新聞の発行と併せて弊社NIE推進室の主要業務である。メンバー5人中、3人が受け持ち、うち1人は現役時代に熱心にNIEに取り組んでいた小学校の元校長先生だ。新聞社と教育現場をつなぐコーディネーターを務めてもらっている。

 実践指定校以外にもNIE活動を広げたいとの思いがあり、一昨年からコーディネーターによるNIEの提案授業を始めた。受け入れてくれた学校の一学級をお借りして授業を行い、先生方に参観してもらうものだ。放課後には教員研修会を設定し、NIEの意義や実践方法を紹介している。

 一コマの授業とはいえ、コーディネーターは4、5日かけて適切な記事を選んでワークシートを作り、A4用紙に指導案をびっしり書き込むほどの念の入れようである。“先生体験”の域を出ない私には「子どもの将来に関わる気持ちで授業に責任を持て」と教えられた気がした。

 提案授業の翌日は、弊社ウェブサイトのNIEワークシートへのアクセスが増える。興味を持ってくれた先生がいるのだと思うと、元気がわいてくる。

 一人の先生のもとには20~30人の子どもたちがいる。NIEに関心を持つ先生が増えたら何十人、何百人の新聞好きが生まれるはずだ。そう信じて先生方との連携を一層深め、子どもの心に新聞の2文字が残る出前授業を目指したい。

筆者・プロフィール

井上 雅史(いのうえ・まさふみ)
徳島新聞社 NIE推進室長

「新聞研究」2018年3月号掲載
※肩書は執筆当時