“先生”体験から考える

現代を生きる力育むため――NIE起点に「必需品」意識を家庭にも

 「ふだんの学習は(他の児童と)一緒に進められない部分の多いお子さんですが、このときはお話がよく理解できたようで熱心に学習に取り組みました。とてもうれしい姿でした」

 長野県庁や地元の清掃センターを訪ね、勉強したことを手書きでまとめた「社会見学新聞」と一緒に届いた手紙。送り主は、1学年1学級だけの小学校で4年生を受け持つ先生だ。

 私は、NIEを受け持つ読者センターへ昨年4月に異動した。ようやく出前授業の講師として「独り立ち」したころ訪ねたクラス。社会見学で学んだことを3本の記事にして新聞をつくる授業だった。礼状に書かれていたのは見出しの付け方などで例として取り上げた子かな、と思い至った。

 私たちの新聞づくりの授業では、その学年の児童らしく書けた記事を板書し、内容をより具体的にしたり、見出しをつけたりして書き方を勉強する。その子は、見学を振り返りながら何を書くか考えるより、自分が興味を持ったことをおしゃべりしている時間の方が長かった。その分、例として取り上げて肉付けしていくには、ちょうどいいあんばいだった。

 「あれ? 〇〇君の記事でみんな勉強するんだね」。傍らで先生がつぶやいた。その子が、こちらの質問に記事中のキーワードを答え、私がそれを並べ替えるなどして見出しができると、クラス全員から「すげー」と声が上がった。驚きの声は、その子にとっては「みんなが認めてくれた」賛辞に聞こえ、学ぶ意欲につながったのだろうか。

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