“先生”体験から考える

文章への抵抗薄れ教科書も楽に

 私たちは、学校側の希望に応じて出前授業を提供している。信濃毎日新聞と販売店会で「こども新聞コンクール」を主催していることもあり、前述のような新聞づくりの出前授業が一番多い。

 その際にも、子どもたちに当日の朝刊を渡し、必ず開いてもらう。見出し、リード、本文といった「伝える文章」の構成を見せることが新聞づくりの一番の手助けとなるからだ。同時に、何とか新聞を読んでほしいという思いを込めて。

 先生たちと話していると、その思いは新聞社側だけでなく、教育の現場でも膨らんでいるように感じる。

 昨年秋、NIEの授業に初めて取り組む小学6年生の担任と話した。「先日行った教科の先生たちの集まりで、子どもたちが教科書を読めていない、読んでも理解できていない、ということで一致したのですよ」。自分のクラスで授業に新聞を使って大丈夫だろうか――。そんな不安が言葉の裏に潜んでいた。

 このクラスはそれまで、出前講座を受けていなかった。そこで、授業時間を1コマ捻出して新聞の読み方講座を組み込んでは、と提案し、準備に知恵を絞った。

 45分間で読み方のツボを押さえるには、どうしたらいいか。同僚の知恵も借り、見出しに使われている言葉を記事中から探す方法を考えた。当日の朝刊を一人一人に配り、「気になる記事」を選んでもらった。その記事を読んで、見出しに使われている言葉に傍線を引かせた。

 記事には小学6年生で習っていない漢字もあるが、ゲーム感覚で何とか文字を追ってほしい。そんな気持ちで見守った。授業のまとめでは「リードの中に、たくさん線が引けたよ」「見出しの言葉を全部見つけた」と子どもの声が弾んだ。

 昨年暮れに、その先生と会った。授業をきっかけに、学校がある町の記事などを選び、新聞を読ませ続けているという。「子どもたちはいま、教科書なんか楽に読めるって言うんですよ。継続して新聞を読むことで、文章に対する抵抗感がなくなりました」

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