“先生”体験から考える

新聞はじわじわ効く薬

 「読んだら意外と面白い記事があった」という感想もあった。家に新聞がなく、触れる機会がないことの裏返しとも言える。「言葉が難しい。(問題の始まりからでなく)途中から読んでも分かるようにしてほしい」という感想は、まとめ記事の充実を求める意見として受け止めたい。ただ「続けて読めば分かってくるよ」と言いたいのが本音のところ。

 弊社主催のスクラップコンテストで、知らない語句を調べる学習につなげている高校の例を見ると、宿題をきっかけに新聞読者になるという道もこれから増えるかもしれないと思える。

 別の高校では、話し合いが成立しないグループもあり、言葉少なにそれぞれが記事を貼って体裁を繕っていた。残念ながら、新聞は即効薬ではない。記事を材料に話し合いを続ければ、じわじわと対話力に効き目が現れる。材料に事欠かない多様性も持ち味だ。

 先の高校で一番驚いたのは「パンダが生まれたことを記事で初めて知った」生徒がいたことだ。上野動物園での誕生から3か月以上たっていた。情報番組でも頻繁に報じられたが、高校生にとってはテレビも縁遠い。教師によると「ネットでも仲間内の話題で終始している」という。

次のページ >> 世界が広がる魅力をどう伝えるか