“先生”体験から考える

心に届く言葉を選びながら――魅力を伝える工夫に終わりなし

 兵庫県内の小学生から大学生まで、「新聞」をキーワードとした出前授業に出向いている。テーマは「新聞の読み方」「新聞作り」「記事の書き方」「記者の仕事」などさまざま。幅広い年代を相手に話しているが、ここで気をつけているのが言葉の使い方だ。とりわけ、小学生には発達段階に合わせた表現を意識している。相手に伝わる言葉を選ぶことの難しさ、スキルの必要性を実感している。

 ある小学校から「インタビューの仕方」についての授業を依頼された。3年生2クラスの国語科に関連した取り組み。3年生になったらどんな新しい教科が始まり、学校生活がどう楽しくなるか、校内の先生に聞いてまとめて、2年生に発表するという。先生へのインタビューに当たって、そのやり方を子どもたちに話してほしいというのだ。

 インタビューは記者にとって取材の基本といえる。テーマを定め、識者や社会で活躍している人らにあれこれと尋ね、記事を書くための素材、情報を集める手段だ。一言で説明するのは簡単だが、このことを3年生に分かりやすく伝えるにはどうしたらいいか。中学生、高校生、大学生でも、普段耳慣れない言葉や専門的な用語を使うと、なかなか理解されないケースがある。ましてや小学生、しかも3年生。教室で子どもたちの成長を支える先生らのたいへんさがうかがえる。とはいえ、45分の授業を任された以上、子どもたちにとって有意義な学びの時間としなければならない。

 新聞や記者の仕事の説明を交えながら展開する授業。出来、不出来は授業の終盤に設けた質疑応答に表れる。「身近な人に知らないことを聞き、調べたことを自分の知識とし、うまくまとめて周りの人に伝える」「初めて会う人や身近な人でも目上の人には言葉遣いが大切」……。教室に響く子どもたちの元気な声に、大きくうなずく。話したことに子どもたちが関心を持ち、活発に質問や意見が出れば、授業テーマに沿った内容がおおむね伝わったとみることができるだろう。

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