“先生”体験から考える

新聞で磨く「言葉の力」

 子供に向かうときは真剣勝負で臨む。初対面だし、どういう子供たちなのかも分からない。何をしゃべるのかと、じっとこちらを見詰める子供たち。ざわつき、何人かでおしゃべりしている子供もいる。そんな時は「人の話をちゃんと聞いて」ときつく注意する。子供たちの特徴やその場の雰囲気を把握し、話を進める。臨機応変であることが欠かせない。

 そんな数々の新聞教室の中で、特に心に残った出会いがある。民間主宰の学習グループの依頼で、新聞を活用しながら「言葉の力」の大切さについて述べた教室だった。小学生から高校生までの十数人を相手に、できるだけかみ砕いて次のようなことを話した。

 人間が生きていく上で、どれほど言葉が大切か。正しい言葉を使って自分の考えをしっかりと相手に伝え、相手の言うことをよく聞いて理解する。それがとても大事だ。言葉を正しく使えない人は、つい乱暴な言葉を使いがちになる。「言葉の力」を磨くことは「生きる力」を育むことにつながる─。

 切り抜いた記事を読み、感想を書いてもらう切り抜き体験にも挑戦してもらった。ただし、それだけでは「言葉の力」を伝えることにならない。

 そこで、どうするか。可能な限り一人一人の感想を読み上げ、本人との対話を挟みながら、記者としての自分の経験や知識を総動員してひたすらコメントするのだ。それによって子供たちの言葉は思いもよらない文脈の中に置かれ、新たな意味を持つとともに内容に広がりが出る。中には、こちらがはっとさせられる感想もあった。

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