“先生”体験から考える

新聞と“ガチ”で向き合う子供たち

 弊社主催「おおいた切り抜き新聞グランプリ」に伴う中学校での切り抜き新聞作りの出前授業では、授業が始まる前からサッカーの話ばかりしている、ひときわ声の大きい男子生徒がいた。新聞作りといっても、多くの生徒は日常ほとんど新聞を読んでいないので、やはり新聞を開くところから始める。サッカーをはじめスポーツ記事が思いのほか充実していたからだろうか。先述の男子生徒が教室中に響く声で「新聞っち、面白えやん!」と言って、その後の教室の空気を“支配”してくれた。新聞作りはわいわい楽しげな雰囲気で進み、各グループで次々と力作が完成。大変多くの応募があった。

 切り抜き新聞作りに取り組んだ別の中学校から、デスク役を仰せつかったこともあった。各生徒にとって、冷静に考えれば“ガチ”で取り組むメリットは何もないのだが、生徒たちは恐る恐るドキドキした様子でチェックの列に並ぶ。見出しに端的な言葉を持ってくること、見出しの大きさを変化させてメリハリを持たせることなどを助言すると、悩んだ様子で席に戻り、「これならどうかな?」という顔で再び列に戻ってくる。新聞と真剣に向かい合ってくれたことがうれしい。

 質問意欲も旺盛で、質問を求めるとどこでも多くの手が上がる。取材の苦労、記者のやりがい、文章の書き方……。だいたいその場で答えられるのだが、ある小学5年生の教室に行った際に2つだけ白旗を挙げた質問があった。汗顔の至りである。一つは株式市況欄の締め切り時間。もう一つは新聞下部の色付きの点の意味であった。後日、印刷セクションの同期社員らに答えを聞き、学級担任に報告した。

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