NIEとは
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NIEとは
NIE(Newspaper in Education=「エヌ・アイ・イー」と読みます)は、学校などで新聞を教材として活用する活動です。1930年代にアメリカで始まり、日本では85年、静岡で開かれた新聞大会で提唱されました。その後、教育界と新聞界が協力し、社会性豊かな青少年の育成や活字文化と民主主義社会の発展などを目的に掲げて、全国で展開しています。
なぜNIEなのか
いま子供たちに求められているのは、地域や社会の中で課題を見つけ、解決のために行動する力を育むことです。膨大な情報が行き交うインターネット社会で、正しい情報を取捨選択し、読み解く情報活用力も必要です。
新聞の強みは、事件・事故、政治、経済から文化、スポーツまであらゆる分野の情報が網羅され、その一つ一つの記事が複数の目による厳しいチェックを経て世に出ている、信頼性の高いメディアであることです。
新聞を学校や家庭での学習に活用することで、社会への関心を高め、自分ごととして考えを深めることにつながります。学習指導要領の理念に沿った学びであり、主権者教育でもあります。子供たちの学びに、ぜひ新聞を生かしてほしいと思います。
調査が示すNIEの教育効果
*NIEの学習効果を調べるアンケートから
日常的に新聞を読むNIEの取り組みの効果も見えてきています。
新聞協会が2019年、全国の小中学校を対象に実施した「NIEの学習効果を調べるアンケート」では、日常的に(週に1回以上)NIEを実施している学校の平均正答率が、月1、2回以下の頻度でNIEに取り組む学校の平均正答率を上回り、日常的にNIEを取り入れることで子供たちの力が伸びることが明らかになりました。
朝読書の時間や、学校生活におけるすき間時間を活用して行う「NIEタイム」に取り組んでいる学校では、さらに高い学習効果が出ていること、NIEタイム実施校では、全国学力テストの国語の記述式問題について、解答を最後まで書こうと努力した児童生徒の割合が全国平均を大きく上回るなど、学びに向かう姿勢が培われること2倍――も分かりました。
*OECD調査でも「読解力向上に新聞は有効」
経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査(PISA)2018年」によると、子どもたちの総合読解力と新聞の閲読頻度に相関関係があることが分かります。
日本の場合、新聞を読む頻度を「週に数回」「月に数回」と回答した生徒の得点が531点、頻度が下がると得点も下がり「月に1回ぐらい」「年に数回」「まったく、またはほとんどない」は498点でした。
新聞閲読頻度が高いほど読解力の得点が高いという傾向は、日本だけでなく他の国においても同様にみられます。
国名 | 新聞を読む生徒 | 読まない生徒 | 新聞を読む生徒と 読まない生徒の点数の差 |
---|---|---|---|
日本 | 531 | 498 | +33 |
オーストラリア | 514 | 504 | +10 |
カナダ | 537 | 524 | +13 |
エストニア | 542 | 517 | +25 |
フィンランド | 541 | 515 | +26 |
フランス | 504 | 496 | +8 |
ドイツ | 526 | 504 | +22 |
アイルランド | 519 | 519 | 0 |
イタリア | 484 | 478 | +6 |
韓国 | 542 | 507 | +35 |
オランダ | 536 | 495 | +41 |
ニュージーランド | 509 | 509 | 0 |
イギリス | 519 | 505 | +14 |
アメリカ | 504 | 509 | -5 |
OECD加盟平均 | 497 | 489 | +8 |
※新聞を読む生徒=「週に数回」「月に数回」新聞を読むと回答した生徒
※新聞を読まない生徒=「月に1回ぐらい」「年に数回」新聞を読む、「まったく、またはほとんどない」と回答した生徒
※生徒=調査段階で15歳3か月以上16歳2か月以下の学校に通う生徒(日本では高校1年生)
新聞協会のNIE推進事業とその歴史
新聞協会では、全国の小・中・高校などを対象にNIE実践指定校を認定し、新聞協会と新聞社が新聞購読料を全額補助する新聞提供事業を実施しています。同様に89年9月にパイロット計画として東京都内の小学校1校、中学校2校でスタートし、96年には制度化が実現、その翌年には47都道府県全ての地域に広がりました。当初、学校総数の1%である400校を目標としていましたが、04年にこれを達成。07年には500校を超えました。
各都道府県にはNIE活動の推進拠点となるNIE推進協議会があり、実践指定校は推進協議会の推薦を経て決定します。推進協議会はこのほかにも、実践者の先生がNIEの実践内容を発表して情報交換する勉強会・セミナーを開催したり、記者の出前授業を実施したりするなど、先生方の新聞活用をサポートしています。
研究・PR事業としては、NIE実践者や教育・新聞関係者が年に1回一堂に会するNIE全国大会を開催しているほか、NIEの実践経験が豊富な現役教師らをアドバイザーとして認定登録する「NIEアドバイザー」制度を04年4月にスタートさせました。
さらに、家族や友だちと記事を読み、感想や意見を書いて応募してもらう「いっしょに読もう!新聞コンクール」の実施、NIEニュース、NIEガイドブックの発行、NIEに関する調査活動、NIEタイムの推進などを通して、NIEを広める活動を行っています。
広がるNIE
教材としての新聞活用は、「新聞について学ぶ」「新聞づくりを通して学ぶ」ことを含め、古くから社会科や国語科を中心に行われてきました。
徐々にNIEのすそ野は広がり、学習指導要領でも各教科において新聞活用が多く取り上げられるようになりました。現行の学習指導要領には、小中高校の総則に「新聞」の文言が初めて盛り込まれました。「主体的・対話的で深い学び」の実現に向け、情報活用能力育成のための教材として新聞を活用することが明記されています。
社会参画意識を培う主権者教育の重要性が高まる中、家庭で取り組むNIEについても見直されています。また、大学での新聞活用や、公民館、図書館など社会教育施設での生涯学習も含めた場で、実践が広く行われています。
児童・生徒の感想から
「生きた教材」である新聞を通じて子どもたちは多くの発見をしています。そんな児童・生徒の感想を、実践指定校の実践内容を地域ごとにまとめた「NIE実践報告書」からいくつか紹介します。
小学生
- ぼくはいつもテレビしか見てないんだけど、テレビで放送している以外にも新聞はくわしくのっているんだと思いました。
- 新聞を読む機会が増えた。記者や記事が伝えたいことは何だろうかと思って読むようになった。
- 新聞の難しい言葉も読んで理解しようとするから、言葉がわかって面白い。
中学生
- 新聞の切り抜きが宿題になったので、新聞を見る習慣がついた。
- 新聞社が取材した情報や編集の仕方で同じ事件でも内容が違うんだと思った。
- 新聞には暗い話も多いけれど、反対に地域であった温かいニュースとかもあって「新聞って面白いんだなぁ」と思いました。日本に住んでいるんだから、日本の良いところも悪いところもちゃんと知っておきたい!!という気持ちが大きくなりました。
- 今まで新聞を読んだりして自分の意見を持っても、誰かと話すことがなかったけれど、NIEの活動で友達と話し合う機会が増え、新聞は出来事を知るだけではないという考えに変わりました。
高校生
- 新聞の記事から知識が深まり、その知識をもとにして発言や発表など表現力が高まった。
- これまでテレビ欄、スポーツ欄しか読んでなかったが、その他の記事を読むようになった。毎日読んでいると世の中の動きがつながっていることに気づいた。
- 自分の考えをまとめて自分の言葉で書く力もついたと思う。そしていろいろな記事の感想を書いていくうちに「知らなかった自分」を知ることができたと思います。私はこういう風に考えるのかと、文字になって初めて気づいたことがたくさんありました。
世界のNIE
世界新聞・ニュース発行者協会(WAN-IFRA)の調査によると、NIEは、世界80か国以上で実施され、多くの国で「民主主義を支え、よりよい市民を作る」と考えられています。
アメリカ、フランス、ノルウエーなどではNIE週間を設け、期間中、新聞記者が学校で記事の書き方を指導したり、教師向けセミナーや公開授業を開催しています。このほか、実際に授業で使う新聞の提供を実施しているところもあります。
またWAN-IFRAは2014年10月、若者読者育成のためにNIEなどの活動を長く牽引してきた12か国のメディア団体を認定し、日本新聞協会もこの一つに選ばれました。選ばれた団体は、アメリカ、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、オランダ、フランス、ドイツ、ブラジル、日本、韓国、コロンビア、ベルギーのメディア団体。(1)若者がニュースを上手に利用する取り組みを長期間にわたって行い、国内・地域の新聞社の若者読者対策を支援している、(2)この取り組みに相当数の人員を充てている、(3)若者読者対策において成果が上がる施策を定期的に実施している――団体として評価されました。
◎世界のNIE殿堂入り~トップ12か国~(Center of Youth Engagement Excellence)
活動歴の長い順に表記
米国:米国新聞協会(1961年~)
デンマーク:Danske Medier (1962年~)
フィンランド:フィンランド新聞協会(1964年~)
ノルウェー:Mediebedriftenes Landsforening(1970年~)
オランダ:オランダ・ニュースメディア協会(1976年~)
フランス:フランス日刊全国紙協会(1977年~)
ドイツ:ドイツ連邦新聞発行者協会(1980年~)
ブラジル:全国新聞協会(1980年~)
日本:日本新聞協会(1985年~)
韓国:韓国新聞協会(1985年~)
コロンビア:コロンビア日刊新聞協会(1993年~)
ベルギー:ベルギー仏語新聞協会(1994年~)
NIE実施国
ここに掲載する「NIE Get Started」(さあ、NIEを始めよう、2005年)は世界新聞協会(WAN)事務局が新たにNIEを始める人たちのために作成したものです。日本新聞協会(新聞財団NIE部=当時)が翻訳しました。
※WANは2009年、国際新聞技術研究協会(IFRA)と組織を一元化し、現在は世界新聞・ニュース発行者協会(WAN-IFRA)となっています。