第8回いっしょに読もう!新聞コンクール 最優秀賞(高校生部門)・芦川琴乃さんと出会った記者の思い

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表彰式で対談する芦川さん(右)と木村記者

裏切られてこそ見えるもの

 取材も、反響も、高校生の言葉も「予想外」の連続だった。高校生部門最優秀賞を受賞した川越女子高2年、芦川琴乃さんが選んだのは、終戦記念日にあわせた社会面連載「戦死と向き合う 戦後72年夏」の一つ。日本兵の父親が戦死したことで「誉れの子」と呼ばれた子供たちの今を訪ねた記事だった。


 戦前、内閣の情報局が出していた「写真週報」という国策グラフ誌がある。その表紙を飾り、「誉れの子」の象徴的存在となった小学5年の少年が、山梨県南アルプス市で元気にされていると聞き、自宅を訪ねた。


予想外の取材結果


 表紙は、父がまつられた靖国神社参拝のため1941年3月に日本兵の遺児代表として上京した少年が、皇后陛下から菓子を受け取る姿を捉えた写真だ。緊張した表情で、頬にはうっすらと一筋の「涙」が光っていた。


 幼くして父を失いながら、悲しむことが許されない苦しさとは。元少年の八巻春夫さんから語られる言葉をイメージしていた。しかし、八巻さんが、その体験を大切な記憶としてとどめている様子もうかがえた。さらに、耳を疑う話が続いた。


 「感無量で涙が出た。でも、撮影前、目薬をさされました」


 幼くして父を失いながら、悲しむことが許されない苦しさとは。元少年の八巻春夫さんから語られる言葉をイメージしていた。しかし、八巻さんが、その体験を大切な記憶としてとどめている様子もうかがえた。さらに、耳を疑う話が続いた。


 祖父母に見送られるシーンにつけられた感動的な言葉も、富士山を振り返る「登下校」の峠も、事実ではないというのだ。


 この記事に関心を持ってくれたのが、埼玉の高校生、芦川さん。彼女は小さな頃から祖父母に戦争の話を聞いてきたことから、終戦の日などには新聞を読むようにしていたという。そして、「誉れの子」を読み、当時の社会状況を「本当に非情だ」と感想を寄せてくれた。


 ただ、芦川さんはここで立ち止まらなかった。「ねつ造は現代にも起こりうるのではないか」という友人の意見をきっかけに、思考を巡らせる。


 「拡大解釈されていたり過剰な表現がされていることはあると思う」「記者という他人のフィルターを通して得た情報」......。メディアリテラシーやフェイクニュースといったキーワードに頼らずに、情報を批判的に読みとる力を獲得する様子が感想からうかがえた。


驚かされた読者の声


 昨年12月9日、授賞式で芦川さんと会い、15分ほど対談した。


 若者は、新聞を読まない、テレビも見ないと言われて久しいが、芦川さんは中学時代から新聞を読み始め、いまは日常的に読んでいるという。そして、ただ読んでいるだけではないことがすぐにわかった。


 「新聞は楽しいですか」という私の問いに、こう答えた。


 「最初は、世の中にこんなに情報があって、いろんな意見があって、楽しいなと思っていた。高校生になって知識が増えてくると、読んだときに考えることがたくさん出てきた。ここは本当にこうなのかと、派生した部分を考えるようになった」


 取材には、しばしば仮説を立ててのぞむが、裏切られてこそ見えてくるものがある。取材とは何か、読者との出会いとは。新聞記者の基本を改めて教えられる出会いだった。

木村 司(朝日新聞東京本社社会部記者)「新聞研究」2018年2月号掲載 ※肩書きは執筆当時(3月1日)