学習指導要領とNIE

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現在の学習指導要領から、各校種で「新聞」が指導すべき内容として明確に位置付けられ、多くの教科に盛り込まれました。NIE20年の成果であり、先生方がNIEに確信を持って取り組むバックボーンになります。一方、総合的な学習の時間の削減、教科内容の質量の増加という条件も加わりました。2011年度に小学校で、中学・高校でも順次全面実施となりました。この機会に、課題も含めて学習指導要領とNIEについて考えてみましょう。

学習指導要領のポイントとNIE

学校の教育活動を進めるに当たっては, 各学校において, 児童に生きる力をはぐくむことを目指し, 創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で, 基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ, これらを活用して課題を解決するために必要な思考力, 判断力, 表現力その他の能力をはぐくむとともに, 主体的に学習に取り組む態度を養い, 個性を生かす教育の充実に努めなければならない。その際, 児童の発達の段階を考慮して, 児童の言語活動を充実するとともに, 家庭との連携を図りながら, 児童の学習習慣が確立するよう配慮しなければならない。

上記は小学校学習指導要領・総則「教育課程編成の一般方針」の記述で中学・高校もまったく同じ文面です(児童→生徒の違いだけ)。新指導要領のポイントはこの一文に集約されていると言えます。項目にすれば次のようになるでしょう。

(1) 基礎的・基本的な知識、技能の習得
(2) これらを活用し課題解決に必要な思考力、判断力、表現力の育成
(3) 主体的に学習に取り組む意欲と学習習慣の確立
(4) 言語活動の充実

(1)~(3)は義務教育の目標として学校教育法30条2項(08年施行)に明記された内容と同一であり、学力の3要素と位置付けられています。言語活動は学習活動や論理的思考、コミュニケーション、感性・情緒の基盤として各教科での充実を求めており(総則「指導計画作成等に当たっての配慮すべき事項」)、今改訂の1丁目1番地とも言われています。

学びのベースである「学習意欲」が学力のひとつと見なされたこと、学習のエンジンとして各教科で「言語活動」が重視されたことは、NIE効果と重なるだけに特に着目すべきです。「子どもたちの表情が変わる」「授業が活性化する」といった教師の手応えは、NIEの学習意欲の挑発力を示しています。記事に対する感想・意見の記述・表明、読み比べなどの活動は新指導要領が重視する論述・リポート等の言語活動そのものであり思考力、判断力、表現力の育成につながります。こうした学習を通して確かな基礎・基本の学力もまた身につくでしょう。NIEの蓄積が改訂に携わった関係者の「NIE手法の有効性」という高い評価につながり、指導要領に「新聞」が比重をもって位置付けられることになりました(下表参照)。

学習指導要領解説書に明記された「新聞」の数

小学校

国語 社会 理科 生活 家庭 道徳 総合 特活
19 15 2 1 1 1 2 2 43

中学校

国語 社会 美術 家庭 道徳 総合 特活
15 6 1 1 1 3 5 32

高校

総則 国語 地歴 公民 工芸I 情報 商業 総合 特活 英語
1 5 10 3 1 8 7 1 5 15 56

英語の15は主として英字紙

改訂の背景とNIE

解説書の総則「改訂の経緯」は、「21世紀は新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域で飛躍的に重要性を増す『知識基盤社会』の時代」と規定し、激しい変化とグローバル化の時代を担う子どもたちの「生きる力」をはぐくむ教育内容として前述(1)~(4)を提示しています。また、解説書はOECD(経済協力開発機構)のPISA調査にも触れ、日本の児童生徒に読解力や記述式問題、知識・技能を活用する能力、学習意欲・習慣に課題がある等の認識を示しています。中教審答申によれば、OECDは知識基盤社会を担う子どもたちに必要な能力を「キー・コンピテンシー」(主要能力)と定義し、この能力をはぐくむ教育課程が国際的に共有されつつあると指摘しています。NIEは新聞の特性(一覧性・俯瞰性・解説性・詳報性・記録性・携帯性・保存性など)を活用して「今」を取り入れる教育であり、実践教師は知識基盤社会での教育を先取りして創意・工夫に満ちた教育を行ってきたといえるでしょう。

キー・コンピテンシー

  • 相互作用的に道具(知識・情報、言語、技術など)を用いる
  • 異質な集団で交流する(協同的な学び・活動)
  • 自律的に活動する

キーワード

指導要領を読み込むと、二つのキーワードが浮き彫りになります。

教科書からの離陸

小・中の前解説書「指導内容のまとめ方や重点の置き方」に示されていた「教材等の精選を図る」という記述が今回削除されました。前述(1)~(4)達成のために授業時間を増やす一方、「基礎・基本的な知識・技能の確実な定着やその活用を図る学習活動の充実を重視するために教科書だけでなく、各学校において使用される各種教材等についても質・量両面での充実が必要」と記述しています。文科省幹部はこの趣旨を「教科書からの離陸」と解説し、「教科書に始まり教科書に終わる教育ではいけない。今日の教育は教科書をベースにしつつも、多様なテキストを活用した効果的な指導が必要。テキストの中で新聞が重要な位置を占める」と話しています。

国立教育政策研究所が3年計画で実施した「キー・コンピテンシーに基づく学習指導法のモデル開発に関する研究」で、08年度は新聞活用を取り上げ「子供たちの市民性を育成するための教材開発」研究が行われました。関東のNIE実践教師15人が参加し、子どもたちが現在直面する、あるいは将来遭遇するであろう課題を新聞記事から拾い出し、図書資料やインターネットも利用しながら課題に立ち向かう多彩な授業が展開されました。10年3月刊行された研究報告書には「3年間の授業で一番集中できて楽しかった」(中3)など子どもたちの言葉とともに、「改めてNIEの力を認識した」という教師の手応えが掲載されています。あらゆる分野での激しい変化と情報化の時代に、リアリティーのある教育を推進し子どもたちの学ぶ意欲を促すために、新聞活用は教科を超えて重要性が増すでしょう。

メディア&情報リテラシー

学習指導要領に直接的な記載はありませんが、中教審の過程では盛り込みが検討されました。変化と情報の時代を生きるには、メディアの特性を知り、情報の的確な読み取りと活用力が不可欠で、リテラシーの育成はきわめて今日的な教育テーマになっています。

各校種の国語での「新聞」の記述は国語教育であると同時に、メディア・情報リテラシー教育でもあります。一例を挙げてみましょう。

  • 「疑問に思ったことを調べて報告する文章を書き、それを学級新聞などに生かすなどの言語活動」(小3、4年 書くこと)
  • 「編集の仕方や記事の書き方に注意して新聞を読む」(小5、6年 読むこと 言語活動例)
  • 「必要な情報を集めるための方法とは、必要な情報があるかどうかを、本の表題や目次、索引等から判断したり、新聞の紙面構成等に基づいて、必要な部分を探して読んだりするなど、それぞれの資料の特性を生かした読み方をすること」(中1 読むこと 解説)
  • 「新聞やインターネット、学校図書館等を活用して得た情報を比較する」(中2  読むこと 言語活動例)
  • 「論説や報道などに盛り込まれた情報を比較して読む言語活動」(中3 読むこと 言語活動例)
  • 「情報を収集し、分析して、自分の考えをまとめたり深めたりする。情報には書籍や文書などの印刷物、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどのマスメディア、あ るいはインターネットなどを通じて接することができる。情報を分析するとは、収集した情報を的確に理解してその要素などを明らかにし、情報の正誤、適否な どを吟味した上で、必要なものを適切に整理することである」(高校・国語表現)

上記のように、国語教育の中で新聞がステップアップする内容で指導対象になっています。「新聞をつくる」「新聞を活用する」「新聞の機能を知る」というNIEの3要素がすべて盛り込まれており、こうした学習が思考力・判断力・表現力をつけ、メディアと情報のリテラシー育成につながることはNIEを経験した教師は理解するでしょう。

課題はクリアできる

NIEに使いやすくなる総合的な学習の時間

総合的な学習の時間が削減されたのは、この時間をNIEに充てていた実践が多かっただけにマイナス要素になるかもしれません。一方、この時間が教育課程の中で明確な位置づけと性格づけが行われたことに注目してみましょう。

横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して, 自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え, 主体的に判断し, よりよく問題を解決する資質や能力を育成するとともに, 学び方やものの考え方を身に付け, 問題の解決や探究活動に主体的, 創造的, 協同的に取り組む態度を育て, 自己の生き方を考えることができるようにする。

上記は小・中・高校の指導要領に記述されている総合的な学習の時間の目標の文面です。目標の明確化は、総合的な学習の時間の理念が共有されず補充学習などに充てられた事例もあった反省から、新たに「探求的な学習」の文言を加えて他教科との目標分担を図っています。教科全般で知識・技能の定着や活用する学習を行い、総合的な学習の時間には教科の枠を超えた横断的・総合的な学習、課題解決・探求的な学習の充実を求め目標外活用を戒めています。

右は小・中の解説書に掲載されている探求的学習のイメージ図です。「自ら課題設定→情報収集→整理・分析→まとめ・表現」という内容はNIEそのもので「NIEがやりやすくなった時間」ととらえることができます。

また、目標の中に「協同的に取り組む態度の育成」が盛り込まれたのも特徴といえます。キー・コンピテンシーの「異質な集団で交流する」を意識した学習で、新聞記事を材料にしたグループディスカッション、新聞作りの際の編集会議などのNIEと重なる取り組みでしょう。


以下、学習指導要領と解説書に記載された「新聞」「論説」「報道」をピックアップして紹介します。ただ、「新聞」の記述はなくても新聞活用の間口は広く、指導要領の中からその一端も合わせて紹介します。

学習指導要領・解説書における「新聞」に関連する記述

赤池 幹(NIEコーディネーター=当時)(2010年4月)