第8回いっしょに読もう!新聞コンクール 最優秀賞(小学生部門)・新井美結さんと出会った記者の思い

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表彰式で対談する新井さん(右)と大澤記者

文字を通して結ぶ善意

 「赤ちゃんのときから伸ばしていた髪の毛を、この記事を読んで、初めて切った」。埼玉県熊谷市立熊谷西小学校の新井美結さん(1年)は、表彰式で照れながら、大きな決断をしたときのことを明かしてくれた。


 記事は、がんなどと闘う子供に、医療用ウィッグを無償提供するNPO法人に、自分の髪を寄付する「へアドネーション」を紹介したものだ。私が世論調査部で読者の投書を扱う「気流面」を担当していた当時、実際に寄付をした女性から投書が届き、それを掲載したところ、多くの共感の声が寄せられた。「来信返信」というコーナーでまとめたものを新井さんが読んでくれた。


 新井さんは記事を読んだ感想をつづり、最優秀賞を受賞した。そこには、記事で初めてへアドネーションを知り、「わたしとおなじようなこどもたちが、びょうきでかみのけがなくなって、かわいそうだなぁ。がっこうにいけるのかなぁ、おともだちとそとであそべるのかなぁ」と心配し、2016年12月に掲載された記事を切り抜いて、手元に置いてくれていたことが書かれている。そして、母親に勧められ、次の年の夏休みに、髪の毛を切ったという。「びょうきでかみのけがなくなったおともだちに、かみのけをプレゼントすることだったら、わたしにでもできるとおもったから」。


 感想文では、新井さんが3歳の時に、母親ががんになったことにも触れている。母親が薬を飲んだり、病院で治療を受けたりしていることを知っているから、「びょうきになると、たいへん」というのを、子供ながらに分かっている。だからこそ、同年代の病気の子にも思いを寄せることができたのだと伝わってきた。最後に「わたしのかみのけで、びょうきでかみのけのなくなったおともだちが、よろこんでくれるとうれしい。かみのけがのびたら、またヘアドネーションしたい」と締めくくっている。


感じた新聞の存在意義


 表彰式で見た新井さんは、小さな、かわいらしい女の子だった。「まだ漢字が読めないので、お母さんに新聞を読んでもらっている」と言い、幼さも感じられた。だが感想文には、母親や病気の子を思いやる優しさがあふれていて、胸が締め付けられた。


 新井さんのように記事を切り抜いてくれていた人が他にもいるようで、今でもNPO法人に、切り抜きとともに寄付があるという。インターネットで簡単にニュースをチェックできる時代に、紙の新聞を読み、切り抜いてくれる人がいるのはありがたいし、新聞の存在意義も感じる。

 ヘアドネーションは、「人の役に立ちたい」と、みんなが心のどこかで持っている善意を、髪を伸ばして、寄付するという、比較的ハードルが低い行為でかなえられる活動だと思う。その善意を形にするのは、寄付する人やNPO法人であるが、記者の仕事は、こうした人の思いを、文字を通してつなぐことだ。今回、私がその役割を担うことができ、善意を結ぶ助けとなっていれば光栄だ。

大澤 奈穂(読売新聞東京本社政治部記者)「新聞研究」2018年2月号掲載 ※肩書きは執筆当時(3月1日)