東海ブロックNIEアドバイザー・NIE推進協議会事務局長会議報告

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活字に触れる子供を育てる取り組み

 東海ブロックNIEアドバイザー・NIE推進協議会事務局長会議が6月24日(土)、岐阜新聞社で開催されました。開会のあいさつでは、岐阜県NIE推進協議会常任幹事の桐山圭司岐阜新聞社取締役編集局長が、6月22日の岐阜県NIE推進協議会総会で、新聞に触れていない児童生徒の現状への危機意識を共有したとあいさつ。新聞に触れないまま成長し、大人になっていく過程に不安を抱かざるを得ないと述べました。桐山氏は子供を視野に入れたニュース提供の工夫をすべきだとして、岐阜新聞社で試みている「かべ新聞コンクール」を紹介。本や新聞を通して活字に触れる機会の場として、ぎふメディアコスモス(岐阜市立中央図書館)の利用も紹介しました。

学校図書館の充実

 第5次「学校図書館図書整備等5か年計画」について、新聞協会事務局より説明がありました。同計画では、新聞配備と学校司書の配置・拡充に向けた地財措置がなされました。主権者教育の一環として、複数紙の読み比べができる環境が整うことが期待されています。

基調講演「新学習指導要領とNIE」より

 新聞協会の関口修司NIEコーディネーターより、「新学習指導要領とNIE―主体的・対話的で深い学びとNIE―」と題する基調講演がありました。内容は以下の通り。

 新井紀子国立情報学研究所教授と文部科学省による読解力に関する共同調査では、およそ3割の中高生が不正解だった。読解力低下の原因の一つに、自然に目にしたり手に入ったりする文字が、この20年間で急激に減少したことが挙げられる。本や新聞、雑誌の購読者数の減少、パンフレットやリーフレットの文字数も大幅に減少している。そこで、これからの社会で求められる資質・能力を育てるための新学習指導要領のポイントとして、言語能力の確実な育成がある。小中学校の指導要領では、新聞の活用が具体的に明記された。背景には、高大接続改革との関係がある。実態として、自己肯定感や社会参画意識が低い、高校生の読書量が少ない、スマホ使用時間が長い(女子高生は1日平均5.5時間)という状況がある。全国学力・学習状況調査(全国学力テスト、小学6年・中学2年に実施)から見えてくる課題は、適切な根拠に基づいて説明する力の弱さだ。2017年度の全国学力テストは、社会に開かれた教育課程が柱の新指導要領を受け、現代社会の課題を問題の素材として、「表現する力」「考える力」「コミュニケーション力」を問う内容が目立った。これからのNIEの授業では、新聞で正しい情報をつかみ、調べ、話し合い、新聞でまとめ、振り返る学習過程を、さらにカリキュラムに位置付けることで、「主体的・対話的で深い学び」が実現できると考えられる。そのために、教師自身が新聞を楽しみ、NIEタイムを実践することが、NIEの広がりにつながるだろう。

推進協議会の実践報告

 推進協議会の取り組みと交流では、東海ブロックの活動報告が行われました。静岡県は、実践指定校担当アドバイザー制度を実施することで、NIEを浸透させているとともに、静岡新聞の朝刊に毎月1回(第1土曜日)掲載される「月刊一緒にNIE」でNIEアドバイザーのワンポイント講座として活動を紹介しています。愛知県は、全国大会後も協議会として持続可能な取り組みを検討しているとのことです。特に新聞とICTのよさを見つめ、これからの教育にメディアの利点を生かし、活用しながら学びを深めていく授業の在り方を探究しているそうです。岐阜県は、実践指定校の実践計画の交流や、成果の発表セミナー、報告書の作成を行っています。三重県は、主権者教育をテーマにNIE研究会を実施、授業プランや実践を紹介しています。東海ブロックの協議会では、新聞社と学校教育とが連携を図りながら、子供に力をつけるために、より充実感のあるNIE実践を試みようとしていることが伺えました。

本会議のまとめ

 最後に、関口コーディネーターが、本会議のまとめを述べました。内容は以下の通りです。

 NIEを実践して、何がどう変わるのか、子供の学力や意識の変化を、NIEの教育効果として可視化することが、NIEが浸透していく大きな要因になる。NIEの壁を乗り越えるために、「教師が新聞を楽しく読む」から「子供が新聞を楽しむ」まで継続的に実践することが求められる。新聞活用を日常化することで、確実に効果が上がる。持続可能なNIEとして、組織で取り組む学校教育の在り方を考えたい。新学習指導要領に新聞活用が明記されたことで、NIEの実践が子供の学びにきちんと位置付けられる教育活動が展開されていくと考える。「NIEは、子供の成長のためになる」と信じている。

 NIEが確実に教育効果のあるものだと実感しつつも、浸透させていくことの難しさも感じています。しかし、この基調講演から、改めてNIEの必要性を感じました。また東海ブロックの取り組みを交流し合い、学び合える有意義な会議となりました。

奥田 宣子(岐阜県山県市立富岡小学校教諭/NIEアドバイザー)(2017年7月11日)