特別支援教育におけるNIE⑪(いるか分教室での新聞学習)

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 2010年6月、国立がん研究センターの小児病棟にある都立墨東養護学校の「いるか分教室」で、新聞ができる過程について、また記者という仕事についてお話をしました。
 朝日新聞社は、センターとは道を挟んで目の前。その割に遠い存在という話を聞いて、もったいないと感じました。私もがんの闘病経験がありますが、入院中はつらいことが多いだけでなく、暇でつまらないものです。まして子どもですから、しんどいことだらけです。新聞社探検のような非日常の学びの機会があれば、アクセントになるかなと思い、「見学もできますよ」と声をかけたところ、授業の一環で来社・見学することがきまり、その事前学習のゲストで私が呼んでいただいたのです。
 「事前学習の事前準備」として、子どもたちは新聞をめくりながら、わいてくる疑問をリストアップ。記者の私が来たときに、何を尋ねるかを事前に話し合いました。
 当日は、女の子2人と男の子1人が迎えてくれて、「有名人に会って一般人のようにドキドキしますか?」といった質問が子どもたちから投げかけられました。「有名人だからドキドキするというよりは、良い記事をちゃんと書けるかなという気持ちでドキドキしますよ」と仕事のプレッシャーについて答えると、不思議そうな顔をしながらメモをとっていました。
 こちらも、「記者の仕事で使う道具はなんだと思う?」と質問しながら、かばんから1つずつ出して見せていきました。ノート、ペン、カメラ、パソコン、携帯電話2つ、あたりはあまり意外性がなかったようですが、ボイスレコーダーや腕章は珍しいようで、興味を持ってくれました。
 記者の仕事の難しさは、正しさと素早さをどう両立させるかという点であることや、取材相手と読者をつなぐことができたときに喜びを感じることなどを話しました。書いた文章は、繰り返し点検し、校閲担当など何回もチェックを通ってようやく印刷されることも伝えました。
 当日は、生徒3人、先生3人に私も同行して、社内の見学コースを回りました。どういう過程で新聞ができあがるかというレクチャーを受け、いざ、編集局フロアへ。そこらじゅうに時計があって、常に締め切りを意識していること、記者は社外で取材や原稿の執筆をしているので、意外とオフィスには人数が多くないことなどを話しました。3人は車いすの移動でしたが、左右をきょろきょろしながらスムーズに見学をしていました。
 スポーツの部門では、早朝までのサッカーの試合で速報作業を終えた記者が、いすの背もたれを倒して爆睡している場面に遭遇。目を丸くしている子どもたちに、「さぼっているわけじゃないんだよ」と説明しました。
 編集局長室をのぞいたところ、「中へどうぞ」と言われ、日々の紙面を決める中枢部に車いすの子どもたちが入るという異例の見学が実現しました。その後も、地下で夕刊の印刷が始まった輪転機を見たり、最上階から自分たちの病室を眺めたり、社員食堂でランチをしたりと盛りだくさんでした。
 見学で学んだことを、今度は子どもたち自身が豆新聞にまとめました。「こんなにノリノリで打ち込んだ学習は久しぶり~」というつぶやきが子どもたちの口から出たと聞きます。楽しい学びのひとときになったのであれば、エスコートした者としてもうれしく思います。
 

朝日新聞 上野 創(7月10日)