特別支援教育におけるNIE④(福井県立ろう学校と道内の高等養護学校)

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生徒と教師が紙面を手に語り合う福井県立ろう学校中学部の授業=2009年

NIEの現場から

 

 聴覚に障がいのある子どもたちが社会の情報を得るには、視覚に訴えるメディアが必要なはず…そう考えたことをきっかけに、2009年に北海道内外の特別支援学校へ取材、数回にわたり紙面化しました。
 子どもが新聞になじむには時間がかかります。少人数で行う特別支援の授業にNIEは取り入れやすいのではと考えていましたが、実際は個々の生徒の意識の違いが際立ち、深く幅広い情報を得る教師の努力なしには成立しません。「なぜこんなことが起こるの」「これまでの経緯は?」という生徒の疑問に、先生たちは即座に答えていました。
 新聞作りや投稿も効果を発揮しています。障がいのある子どもたちは他人に支えられることが多く、受け身になりがち。しかし問題意識を持って発信することで、人へ伝えようとする主体性も育ちます。「物事を観察する習慣ができました」という子どももおり、地域へ、社会へと視野が広がるようでした。
 最初に取材した福井県立ろう学校の生徒は印象的でした。「政治に関心のない若者が増えていると言われていますが、私はちゃんと興味を持っています」。社会にしっかり根を張って生きているという自信に満ちたまなざしに、NIEの成果を実感しました。
 その一方で昨年、出前講座の講師として高等養護学校の生徒の前に立った時には、自分の能力と経験、情報不足を痛感しました。
 担当の先生はこれまで進めてきた学習の経過について丁寧に報告してくれ、それをもとにこちらも準備を進めました。生徒の学力について尋ねると「小学校5年生くらいです」との答え。そこで、通常は小学生向けに行っているワークを用意しました。
 しかし、実際に生徒へ対面すると心の成長は個人差が大きく、さらに年齢に相応した自尊心を大切にしながらワークの達成感を味わってもらうのは、非常に難しいことでした。
 特別支援の分野に限らず、新聞社のNIE担当者は、教育の現場からもっと学ぶ必要があります。紙面を提供するだけではなく、今子どもたちはどのような状況にあるのか、新聞を使うことでどのような可能性が広がるのかを考え、主体的に提案していく時期が来ています。
 

北海道新聞NIE推進センター委員 舩木理依(5月14日)