津波の被災地を取材記者から学ぶ 岩手・一本木小

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津波被害を取材した様子などを5年生の授業で伝える鈴木記者(右)と田村さん(左)

2012年度の実践指定校で、岩手県内陸部にある滝沢村立一本木小学校(阿部幸子校長、児童155人)は7月6日、東日本大震災の発生時、岩手県の沿岸支局勤務だった記者を招き、大津波の被害や、取材した感想、子どもたちへのメッセージなどを聞いた。岩手県教委は今年度の全県的な重点テーマを、大震災のアフターイヤーにふさわしい「復興教育」としており、その意味でも充実した「NIE授業」になった。
学校に招かれたのは、3月まで同県南部の陸前高田市で、岩手日報社陸前高田支局長として4年間勤務した鈴木多聞記者(現・同社学芸部次長)。陸前高田市は大津波で市中心部の主要施設の大半を失い、死者・行方不明者は約1850人、浸水域人口に対する犠牲者率は11%以上と、市町村別では宮城県女川町に次いで高かった。
授業のテーマは「大震災から1年、そして明日へ」。5、6年生の総合学習の時間で1コマずつ、同校に3月まで勤務したNIEアドバイザーの田村勝さん(現・宮古市立亀岳小学校副校長)が特別に担当した。田村さんは、鈴木記者が取材、執筆した「日はまた昇る」という企画記事を事前に配布、児童たちは読みこんで学習してきた。5人のうち4人の家族を失った男性に焦点を当てた内容で、その後の生き方や思いを追跡していく「定点取材」の手法による記事だった。
田村さんは、鈴木記者が記事を書き、写真を撮影した時を語る言葉をもとに、同じ岩手県でも内陸部と沿岸部では、大震災の被害の大きさも、現在の様子もまったく異なることから分かりやすく説明。「感じたり、思っていたよりも、ずっと被害が大きかった」「(記事にある)男性の立場なら、自分はどうしていいか分からないだろう」「1日も早く復興してほしいし、応援したい」など、児童の感想を引き出した。
新聞、テレビで津波被害を幾度となく見た児童も、陸前高田市では小学校が避難所やがれき置き場になり、「校舎も校庭も長い間、使えなかった」「1年が経過した現在の街は、20%くらいの復興だと思う」などの話に聞き入った。
鈴木記者は「記事で伝えたかったことを、子どもたちがよく読み込んでくれていた」「大変なときに取材に応じてくれた男性の尊さも理解してもらうことができた」と感想を述べた。
田村さんは「鈴木記者が記事で伝えたかったことの一つは、震災や現地の思いを、これからもずっと忘れないで見守ってほしいということ」としめくくった。

岩手県NIE協議会事務局長 工藤哲(8月29日)