特ダネこそ究極の速報

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1.大量の情報があふれる時代

現代社会は新聞、テレビ、ラジオ、雑誌など従来のメディアに加え、1990年代になって本格的に登場したインターネットの急速な普及により、大量の情報があふれる時代となりました。特にインターネットの利用者は、世界中のネットワークにアクセスして欲しい情報を手に入れるだけでなく、自らホームページやブログを開設して情報を公開、発信することが可能となり、私たちを取り巻く情報量は一気に増大しています。

多様なメディアを活用できて便利になった一方で、さまざまな問題も指摘されています。インターネットでは誰もが情報の発信者になれることから、誤った情報や出所不明の情報、あるいは著作者の権利を侵したり、意図的に世の中を操作しようという情報が出回るケースも少なくありません。正しい情報と偽の情報を見極める必要性は以前にも増して高まっています。

インターネットで情報を入手する際には、欲しい情報にだけ接近するため、得られる情報が細分化され、自分の関心のある情報しか取得しない傾向も強まっています。こうなると、社会全体への関心が薄れ、個人が「たこつぼ」化することによって社会の分裂が進む恐れも指摘されるようになってきました。

新聞社の情報提供

2.見直される新聞の役割

こうした時代だけに、マスメディアの主流を歩んできた新聞の役割と機能が見直されています。

新聞は幅広い分野の情報を総合的に編集して日々提供し、社会生活を送るうえで欠かせない情報源です。新聞は、プロとしての訓練を受けた記者が取材、執筆、編集し、紙面になるまでにはデスクをはじめ複数の関門を通り、確認を重ねた情報であることから、正確さや信頼度で高い評価を得ています。最近は各紙とも記者の署名記事を増やし、さらに責任を明らかにするようになってきました。

新聞の特性のひとつは、その日のニュースの中で何が重要なのか、読者がひと目で分かるように作られていることです。新聞には1面から最終面までさまざまなページがあり、それぞれに大量の情報が区分けされて盛り込まれています。それを各ページごとに、置く位置や見出し、写真の大きさを使い分けるなどのレイアウトによって格付けしています。

テレビやラジオも、放送局が重要だと判断した順序や長さでニュース価値が分かりますが、ニュースの時間が終われば消えてしまいます。インターネットのニュースサイトは速報を重視するあまり、細かい情報がトップニュースになったり、社会的に重要なニュースより芸能やスポーツなど人々の関心の高い話題が優先される傾向にあります。

持ち運びができる新聞は、好きな場所で、都合のいい時間に、いろいろなニュースを見比べながら、読みたい記事を読むことができます。情報が整理された形で掲載され、飛ばし読みや拾い読みもしやすく編集されています。

情報量の多い新聞は、内容を詳しく伝えることができます。経済の動向、人口の推移、世論調査結果などは、記事に加えてグラフや表を載せることで理解しやすくなります。重要な裁判の判決文や法案の詳報、スポーツ記事のスコアやテーブル、競技の入賞者名などは、新聞ならではの詳細な情報といえましょう。

印刷された新聞は繰り返し読むことが可能です。保管も比較的簡単で、切り抜いてとっておくこともできます。保存された新聞は歴史の記録として、重要な資料にもなります。

新聞には、事実を伝える報道機関としての役割と、ニュースの背景を解説したり、論評や主張を掲げる言論機関としての役割があります。

事実報道について、新聞はニュースを伝えるスピードではテレビやインターネット(携帯電話のニュースサイトを含む)にかなわないと言われます。新聞はテレビなどと違って、締め切り時間という一定の時間内にニュースをまとめて掲載せざるを得ない点で、速報性に限界があるのは否めません。しかし、マスメディアとしての長い伝統から、特ダネが一番多いのはやはり新聞でしょう。新聞の特ダネをテレビなどが後追いするケースは珍しくありません。特ダネこそ究極の速報といえるでしょう。

(出典:『ようこそ「新聞」へ』<日本新聞教育文化財団=当時、2007年4月発行>より)