実践指定校実践例 2014年度

人欄に学ぶ―見えない心を想像しよう―

神戸大学附属中等教育学校(こうべだいがくふぞくちゅうとうきょういくがっこう)

教科、科目、領域

中学校: 国語
学年 中学 1年
身近な相手への取材を通して「人欄」の記事を書く
言葉を吟味して発信することの意義を理解することができる
取材の仕方、「人欄」の書き方
新聞制作学習 新聞活用学習

(1)講演を聞く 「『人欄』に学ぶ 取材・執筆の極意」 1時間
(2)記事の分析と執筆 2時間
(3)取材 2時間
(4)執筆と推敲 3時間
(5)説明と相互評価 3時間

11

兵庫県NIE推進協議会の山崎事務局長に講義をお願いした。他者の心に配慮した取材の仕方を見る貴重な機会となった。
記事の全体構成と展開の仕方を考えさせるため、新聞の「人欄」を切り抜き、段落分けと各段落の内容分析を行わせた。さらに講義の中で取材を受けた教員について、「人欄」と同じ形式で記事を書かせた。書き手によって、伝え方と与える印象が異なることを実感させた。
初対面の同学年生徒に対して取材をした。相づちやうなずきを交えて和やかな雰囲気を作ること、話の内容を正確に聞き取るためにメモをとりながら聞くこと、話そうとする事柄についての考え・気持ちにふさわしい語句を選んで話をさせることに留意させた。
取材後、取材メモから適切な題材を選ばせ、相手を尊重した好意的な表現を意識しながら記事を書かせた。相手の意に反していないかを確認するため、取材相手に読んでもらった。自分と他者のものの見方の違いに気づかせるため、添削を受けて「伝えようとしたけれども伝わっていなかったところ」を整理させた。表現の仕方を吟味して記事を推敲させ、再度記事を書かせた。
推敲の仕方と記事を発表させた。「取材相手を尊重して記事が書けているか」に着目して相互評価させ、特によいものをクラスで紹介した。   
聞き手には発表者が推敲を経て変化させたところに気づかせ、相手を尊重した好意的な表現を見つけて記述させた。

本校は2015年度に明石校舎と統合した。取材相手は明石校舎に在籍していた生徒80人である。

生徒たちは取材の仕方に難しさを感じていた。場の雰囲気を良くしようと配慮したり、事前準備の大切さや質問の仕方や話の広げ方、深め方を学ぶことができた。
記事を書き、取材相手に添削してもらうことで、お互いが意図したことに違いがあることに気づき、ものの見方・考え方を広げることができたようである。

今回の学習では、講演で聞いた「人欄」の書き方を生かして、取材相手との会話を通して自分が感じた魅力を引き出し、読み手に伝えるということを意識させた。さらに取材相手から記事の添削を受け、「伝えようとしたけれど伝わっていなかったこと」に気づくことで、ものの見方・考え方の違い、意思疎通の難しさ、言葉を吟味することの必要性を考えさせた。また、相手の指摘を受け止め改善しようとすることは、他者を尊重することであり、今後のよりよい人間関係の形成に繋がるだろう。 
新聞に書かれた記事の裏には、取材者と対象者との丁寧な言葉のやりとりが存在した。言葉を吟味して伝えることの大切さを学ぶことができる貴重な学習となった。

実践者名:神戸大学附属中等教育学校 立花 佳澄