実践指定校実践例 2014年度

新聞から事実・意見を読み取り「複眼的思考力」を育てる試み

千葉県立八千代東高等学校(ちばけんりつやちよひがしこうとうがっこう)

教科、科目、領域

高校(高等専門学校を含む): 公民
学年 高校(高等専門学校を含む) 2年
第3編現代社会の諸課題 第2章国際社会の諸課題
現代の国際社会における価値観の対立をいかにして乗り越えるかを時事問題から考える
現代社会や国際社会の諸課題やその背景を考えるタイムリーな記事を提示する
新聞活用学習

国際社会の諸課題
時事問題を知る(1時間目)
時事問題から考える(2時間目)
みんなで考える(3時間目)

第1時~第2時

(1時間目)時事問題を知る
今回の問題「フランス紙襲撃テロ事件」
(導入)5W1Hと新聞記事の関係について説明し、この後の作業を指示する。要約の仕方については、事前に指導しておく。
作業(1)フランス紙襲撃テロ事件を報じた記事を読み、プリントに5W1Hを箇条書きする。
作業(2)この事件の背景についての解説記事を読み、200字以内に要約する。
(2時間目)時事問題から考える
(導入)前時の「要約」を添削したものを返却し、補足説明をする。民主主義の基盤としての「表現の自由」を擁護する意見や、宗教的価値観を尊重し「表現の自由」の行き過ぎを批判する意見を紹介する。
西洋的価値観とイスラーム世界の対立点、および両者の中でも見解に幅があることに留意させる。その上で、論点をいくつか提示する。例「表現の自由」は制限すべきか?価値観の対立を乗り越えるにはどうすればよいか?など
作業(1)自分の考えをアウトラインに書き出す。
<序論>事実を踏まえて論点を示す。<本論>反対意見を考慮しつつ、自分の立場を明確に示す。自分の意見の理由や根拠を示す。<結論>ポイントをまとめる。
作業(2)アウトラインを参考に400字以内で小論文を書く。
次時は、提出された小論文から生徒の多様な意見を抜粋したプリントを配布し、多角的・多面的に考える重要性を考えさせる。

今回の教材は宗教や思想が関係するため、特定の考え方や立場に対する偏見を作らないように留意する必要がある。同じイスラーム教徒でもこの事件に対する考え方には多様性があること、西欧的価値観といってもその考え方には幅があることなどに留意して授業を展開する必要がある。
解説・論説記事を提示する際は、できるだけ多角的・多面的な視点を取り入れられる資料を用意し、オープンエンドで考えさせることが必要だと思う。

最初は5W1Hを抜き出す際、長文を前に「難しい」とか「WHYはどこ?」「HOWが分からない」などと戸惑っていた。しかし、次第に集中し、事後アンケートでは「記事やニュースのポイントを理解するのが早くなった」などの意見が多かった。小論文も時間内に終わらず苦悩している生徒が多かったが、事後アンケートでは、「小論文が最も印象に残り、かつ勉強になった」「ニュースに向き合えるようになった」等の感想が多かった。

幸い、2年間同じ生徒たちに継続して実践できた。1年目(1年生「現代社会」)のときと、2年目(2年生「政治・経済」)に(ここに掲載しなかったが)「気になる新聞記事レポート&スピーチ」と「新聞活用小論文」を実践した。授業の始めに、一人3分×3人で13、14回で全員に新聞記事スピーチを実施した。1年目は新鮮だったのか、楽しそうだった。2年目は記事から自分で疑問点を見つけ、調査したことをスピーチするように改良した。結果、単なる感想や「こうなったらいいのに」という願望表現で終わる子が多かったスピーチに、提案や意見提示が増えた。小論文は、5W1Hを書き出し、解説・論説記事を要約させる手間を追加した。結果、小論文に厚みと深さが加わったと感じた。課題は、自分自身の適切な記事を見つける頻度がまだ低い点だろう。

実践者名:千葉県立八千代東高等学校 山崎寛雄