実践指定校実践例 2014年度

「円安の功罪と牛丼の値上げ」から考察する国際経済のしくみ

栃木県立黒磯高等学校(とちぎけんりつくろいそこうとうがっこう)

教科、科目、領域

高校(高等専門学校を含む): 公民
学年 高校(高等専門学校を含む) 3年
世界経済と日本
国際経済の基本的な理論や概念について理解させ、国際的相互依存関係の深化や、グローバル化がすすむ国際経済の特質について把握させる。
新聞記事の読み取りから、国際経済の仕組みを理解し、世界と不可分の関係にある日本国内の諸問題に気づかせる。
新聞活用学習

指導にあたって、身近な具体例を取り上げることにより、国際経済について見方や考え方の基礎となる概念・理論の理解を深めさせる工夫が必要である。そのため、「ア 現代経済のしくみと特質」との関連に留意しつつ、市場の機能に注目させながら、為替相場が国内企業や国内経済に及ぼす影響を新聞を活用しながら理解させる。

全1時間

導入で「円安・円高」について質問する
→「円安 恩恵と副作用」(読売新聞)と「進む二極化 偏る富」(東京新聞)のリード文を読ませる
→各自で記事を熟読し、ワークシートの空欄補充問題について答える
→教員が答え合わせを行い、「円安・円高」が国内経済にどのように影響するのか、再度確認する
→企業業績と共に、金融資本の所有者の富が増大する一方、給与収入が伸びてないことも記事から読み取る
→牛丼をどれくらいの頻度で食べに行くか、答える
→「吉野家値上げ 業界に波紋」の前半部分を読み、牛丼の値上げについて知っていることがあれば答える
→ワークシートの質問「牛丼業界で、かつて低価格競争が可能であった背景と、現在は値上げせざるをえない背景」を、記事を熟読することにより答える
→現在のような状況では、牛丼業界はどのような対応をすべきか答える
→実際に業界はどのような対応をしているか、記事を熟読して答える
→記事中に答えが記載されてない「値上げしても、社員の給料が上がらない」理由について考える
教師から指名された生徒は答える
→最後に教師からの説明を聞き、ワークシートの回答欄に要旨をまとめる


 記事の熟読と空欄補充を通じて、記事内容の概要を把握させる。その際、生徒が記事中から主体的に問題の所在を理解できるように配慮し、説明も簡素化する。
 為替相場と国際収支の関係についても、生徒自身の頭で考察するよう誘導する。そして、相場の変動が企業収益への影響と金融資本の増大、及び「牛丼の値上げ」という事象の原因となっていることを理解させる。

概ねわかりやすかったようで、良好な反応であった。ただし、何人かの生徒は円安・円高の仕組みが最後まで理解できなかった。また、「値上げが給料上昇につながらないのはなぜか」という質問は難しかったようで、答えが出づらかった。

生徒が理解しづらかった「円安・円高のしくみ」と「給与の上昇に直結しない商品の値上げ」をどのように教えるか、課題である。

実践者名:栃木県立黒磯高等学校 小林 和久