実践指定校実践例 2013年度

新聞記事を活用した,様々な「立場」での「幸福」の理解

都立蒲田高等学校(とりつかまたこうとうがっこう)

教科、科目、領域

高校(高等専門学校を含む): 公民
学年 高校(高等専門学校を含む) 1年 、3年
1学年「現代社会」 第1編「生命」分野
生命倫理分野を題材に,新聞を通じて様々な「幸福」の存在と,その対立構造を理解させる。
新聞の記事だけでなく、読者投稿欄など紙面の様々な場所から、様々な立場やその幸福を理解させる。
新聞活用学習

(第1時)科学技術の発達と生命倫理①
科学技術の発達によって様々なことが可能になったことを理解する一方で,倫理的分野から検討する「生命倫理」の考え方を理解する。
(第2時)科学技術の発達と生命倫理②
脳死と臓器移植の問題について学び,制度の変化とともに,「臓器移植」をめぐる様々な立場を理解する。
(第3時)新型出生前診断から考える科学技術の未来
「新型出生前診断」を題材に,新聞記事などから読み取りながら,様々な立場からの幸福を理解し,今後の科学技術の在り方を考察させる。

(第3時)新型出生前診断から考える科学技術の未来

≪導入≫
新型出生前診断について新聞記事を用いて説明し,新型出生前診断に関する理解を深める。

≪展開≫
(ⅰ)「新型出生前診断」に対する(「賛成」と「反対」の立場から)自らの意見を,理由とともに表現する。

(ⅱ)資料などを何も提示せず,個々人でワークシートに示された各立場の人々(障がいを持つ子どもの親,妊娠中の夫婦など)が「新型出生前診断」に対してどのような立場で,どのような考えを持っているのかを考えさせる。一定時間考えさせた上で,新聞記事を提示し,それぞれの立場の人々の思いを考えさせる手掛かりとする。

<使用資料>
朝日新聞 「声」(2013.4.11付「ダウン症の娘を育てた喜び」他)、「陽性だったら 揺れる覚悟」(2013.4.28付 朝刊記事)、西日本新聞 「出生前診断 安易な広がりは避けたい(社説)」(2012.9.4)

(ⅲ)今後,出生前診断を行っていく上で気をつけなければならないことを考えさせる。進め方は(ⅱ)と同様。

<使用資料>(※一部,抜粋)
琉球新報 「血液でダウン症診断 迷わず産める社会作りを(社説)」(2012.9.2)
中国新聞 「新たな出生前診断 技術本位の現状危ぶむ(社説)」(2012.9.4)

≪まとめ≫
グループで意見を発表し,メンバーでの意見をまとめるとともに,本時のまとめを行う。

(1)立場ごとの幸福を考えさせる際,最初から新聞記事を見せるのではなく,まず,自分たちで考えさせてから,その考えを補うものとして新聞を提示した。
(2)新聞での立場による考え方は,あくまでも一つの考え方であるとし,それが正解ではなく,1つの立場でも様々な考えがあり得ることを示した。

本校は,平成19年度よりエンカレッジスクールの指定を受け,“小学校から中学校まで可能性がありながら,なかなか力を発揮しきれずにいる皆さんのやる気や頑張りを,応援し励ますことを打ち出した学校(本校ホームページより)”を目的としている。そのため,新聞も満足に読んだことがない生徒が多かったが,どの記事に対しても興味深く読んでいた。

本校は学力に課題を抱える生徒が多く,家庭で新聞を購読している生徒は皆無に等しい。そういった観点から,“いかに「新聞」の存在そのものを生徒の学習に位置づけるか”から始まった。結果として,新聞に対する興味・関心が高まり,新聞を読む習慣が定着した生徒も出てきた。一方,今後の課題としては,まだ新聞の存在が授業のみの一過性の存在となることに加え,NIEの在り方として,他の教科などを含めた学校全体での取り組み方法を検討していく必要があるであろう。

実践者名:都立蒲田高等学校 浅川 貴広