実践指定校実践例 2013年度

道徳の時間における新聞記事の活用~「思いやり」の心情を育む授業に関連して~

岡山市立富山中学校(おかやましりつとみやまちゅうがっこう)

教科、科目、領域

中学校: 道徳
学年 中学 2年
道徳(思いやり)
平和に関する詩の理解を通し、世界平和だけでなく生徒にとって身近な平和にまで考えを及ばせることで、温かい人間愛の精神に気づかせ、他者への思いやりの心情を育てる。
修学旅行に向けて平和学習を進める中で、特別活動とは別の方向から、文字である新聞記事をベースに実際のニュース映像とからめて自身の心情に深く迫る。
新聞活用学習

(第1時)平和の詩を通して、作者の考えや思いを感じ、それを自身の日常にある「平和」に結び付けることで「思いやり」の心情を育てる。
(第2時)「思いやり」をテーマにした2つのエピソードを題材として用い、授業の終末部では前時に聴いた「OMOIYARIのうた」の歌詞を読み、「平和」な日常には「思いやり」の心が不可欠であることに気づかせる。

第1時

(1) 「平和」について考える。
→「平和」という言葉のとらえ方は、単に「戦争ではない状態」だけを指すのではなく、「穏やかでトラブルがない状態」も指すということから、日常生活の穏やかさにも「平和」があることに気づかせる。
(2) 新聞記事(2社)に掲載された沖縄全戦没者追悼式で発表された詩の言葉について考える。
→空欄部に入る言葉を考えることで、自然と、「平和は何から生まれるのか」ということを考えることができるようになったり、「平和な状態を続けるために、自分自身ができることは何か」を自然に考えることができるようになったりする。
(3) 作者による詩の朗読映像を観る。
(4) 「OMOIYARIのうた」を聴き、感想を書く。
→「平和」な状態を自身の力で作り出すために不可欠なのは、自分勝手な利己的な判断や行動は良くないことであり、そうではなく相手の立場や気持ちを想像することで思いやりのある優しい心を持つことだということに気づかせることである。なお、この「OMOIYARIのうた」には、今回のテーマである日常的な「平和」を作り出すためのキーワードが多く含まれている。

(1)2社の新聞記事から読み取れる要素を学級全体で確実に把握していくことで、作者像を明確にする。
(2)詩には聞きなじみのない言葉があるので、新聞の解説部分を用いて理解を深めておく。

「自分が『平和』の心を持って、人に接することが大事なんだと思う。そういった『小さな平和』を作り続けることが、戦争をしないなどの『大きな平和』につながるんだと思う」などの当たり前に過ごしている日常のありがたみを改めて実感できたという意見が多く見られた。

今回の実践では「平和」の意味を捉え直すことから生徒の興味関心を呼び起こし、それをその後の授業に関連させていった。もちろんこの授業のみならず、一つひとつの道徳の時間の取り組みは、日々の小さな積み重ねがあってこそだと考える。例えば、生徒へのプラスの声かけや学級通信の活用、行事等の取り組みの後の振り返りの時間の活用、そして時機に応じた教材の活用など、地道な実践こそが生徒の成長を考える時に、ものをいうのではないかと思う。そして、実践し、生徒の表情や発言を継続的かつ意識的に見てきたからこそ分かるプラスの変化があった時に、指導の価値の意義がはっきりしてくると考える。だからこそ、今後も道徳の時間の授業展開に新聞記事を活用した自作教材も取り入れることは時代や社会の把握という点でも有意義であると考える。

実践者名:岡山市立富山中学校 秋山容子