実践指定校実践例 2013年度

新聞を活用して「複眼的思考力」を育てる試み

千葉県立八千代東高等学校(ちばけんりつやちよひがしこうとうがっこう)

教科、科目、領域

高校(高等専門学校を含む): 公民
学年 高校(高等専門学校を含む) 1年
第2編現代社会と人間としてのあり方生き方・第3章現代の民主政治と政治参加の意義
現代の諸課題や社会的事象に対して、多角的・多面的な視点で考え、自分なりの意見を論理的に表現する力の育成をはかる
教室での授業と社会を結びつけるために適切な記事を使用し、「事実」と「意見」を区別しつつ多様な視点・考え方を読み取る。
新聞活用学習

基本的人権の保障と新しい人権
(1)日本国憲法における国民の権利(1時間)
(2)自由権(3時間)
(3)社会権(1時間)
(4)参政権と法の下の平等(2時間)
*実践・・・新聞を活用した小論文「受刑者に選挙権を与えるべきか」(2時間目)
(5)基本的人権を保障するための権利・新しい人権(2時間)

第7時

(導入)前時までの学習内容の確認
・「憲法」と「法律」のちがい
・法の下の平等、参政権などの確認
(展開)
(作業1)新聞記事から「事実」を読み取る。
受刑者の選挙権を制限する公職選挙法の規定に対する大阪高裁の「違憲」判決記事から読み取れる「事実」を、質問形式のプリントに書き出す。
(作業2)新聞記事から複数の「意見」と「理由」を読み取る。
複数の新聞記事から、原告・裁判官・弁護士・法務省幹部・大学教授等の「意見」や「理由」、諸外国の例やその背景にある考え方などを、質問形式のプリントに書き出す。
(作業3)自分の考えを小論文(200~400字)にする。
質問形式でまとめたプリントを参照しながら、自分の意見(立場)と「理由」、「反対意見」と「理由」を踏まえて論述する(机間巡視しながら良く書けている生徒を見つける)。
(まとめ)生徒が書いた小論文を発表する。(2,3名を指名)
憲法の規定と法律が必ずしも一致していないこと。意見が分かれる問題が実際に多くあり、その背景にある考え方も様々であること。自分なりの意見をもち、異なる意見の人と話し合うことの重要性に触れて、次時につなげる。

学習テーマと社会を結ぶトピックの選定する。
「事実」は勿論、できるだけ複数の意見とその理由や背景が読み取れる記事を用意する。
一方的な意見を指示する情報に偏らないように情報を集める。
事実と意見、理由などを区別できるような質問を一問一答式でプリントにすることで、長い文章からでもポイントが分かるようにする。
生徒の書いた小論文は、回収して「多面的」「多角的」に考えられている例を紹介する。

論述を苦手とする生徒が多い中で、賛否が分かれるテーマに「新聞記事」を活用し、「事実」と「複数の意見」を箇条書きして行くことで、自分なりの意見が述べられるようになる生徒が多かった。賛成・反対・条件付賛成(反対)など、生徒の意見も多様であり、多くの生徒が一方的(単眼的)ではなく、反対意見を考慮しつつ複数の視点から複眼的に意見を述べていた。「先生、討論しようよ!」という声が上がった。

今回は、ロックやルソーの社会契約説をベースに、国家と主権について考えさせたのち、人権保障と法規制を考えるタイムリーな記事が見つかった。さらに、賛否の分かれる問題に対する「複数の意見」「諸外国の例」「背景となる考え」など、多様な内容の記事が見つかった。そうした条件が揃ったことで質問プリントも作成しやすく、生徒たちの論述もしやすかったと思う。常日頃から、広く記事に目を通して、記事情報の収集をしておく必要がある。また、折に触れて「小論文」を書かせていたこと、その際、必ず複数の考え方から書かせる訓練をしていたことなどもスムーズな学習活動につながった。この実践をさらに汎用性を高め、多くの学習テーマで実践可能にするために、どのような工夫をするべきかが今後の課題である。

実践者名:千葉県立八千代東高等学校 山崎寛雄