実践指定校実践例 2013年度

幸せって何だろう~「高瀬舟」を読んで人の生き方を考えよう~

燒津市立大村中学校(やいづしりつおおむらちゅうがっこう)

教科、科目、領域

中学校: 国語
学年 中学 3年
「思考力」論理的・多角的に考える.「高瀬舟」森鷗外 読む(文学)
「安楽死」「生活苦」を扱った新聞記事を比較して読むことで、時代を超えた人間の生き方、社会のあり方について考え、様々な価値観に触れながら、ものの見方を広げる。
現代におきている「安楽死」や「生活苦」を題材にした新聞記事を10~20用意して、冊子に閉じて資料とする。生徒に配布し、興味のある記事を読み比べる。
新聞活用学習

1・2時限目 本文を読んで、概要を掴み、初発の感想を書き、追求することを明 ら かにする。
3時限目   難語句や、当時の時代背景について調べる。
4時限目   庄兵衛と喜助の共通点と相違をまとめる。
5・6時限目 庄兵衛の喜助に対する気持ちを読み取り、喜助は幸せか、話し合いをする。
7時限目  「安楽死」「生活苦」などの社会問題を新聞記事から知る。
8時限目  人の生き方や社会の在り方について、自分の意見をまとめる。

8時間

1 新聞記事の紹介
前時の話し合いの中で出た「安楽死」「生活苦」を扱った新聞記事を紹介する。(「高瀬舟」の中だけでなく、人間の根源に関わる永遠のテーマであり、現代社会でも、喜助と同じ様な立場にいる人が存在することを確認させるためである。)
2 新聞記事から「社会のあり方や人間の生き方について」意見を持つ。
これらの問題を扱ったいくつかの新聞記事から生徒は気になる記事を選び、「社会のあり方や人間の生き方について」意見を書く。
3 学びを実感する
単元のはじめと終わりに自分が考える幸せについて意見を書かせ、単元の終わりに、その二つの意見を、生徒自らが比較することで、単元を通しての学びを意識させる。

生徒の身近にあり、読みやすく想像しやすい新聞記事を、何種類か用意する。短い記事から、読み応えのあるものまで字数も様々である。いくつかの記事の中から2~3種類、各自が意見を書きやすいものを自由に選択するほうが、文章を読んだり書いたりすることが苦手な生徒にも取り組みやすいと思われる。

現代でも生活することさえ困難で、生きるために犯罪を起こす人がいること。苦しんでいる身内を楽にさせたいという思いから、手をかけてしまう事件があることに多くの生徒が驚きを感じた。また、現代にも「高瀬舟」の喜助のような苦悩を感じている人々がいることに多くの生徒が驚いた様子だった。同時に、多くの生徒が自分の置かれている立場がいかに幸せであるかということに気が付いた。

今回は江戸時代を舞台にした作品の中から感じたことを、現代に生きる生徒がより身近に感じさせるために、本文だけでなく「新聞記事」を用いた学習を行った。今回の学習では「幸せとは何だろう」という単元を貫く学習問題を設定した。授業前は「物質的に豊かであること」「人より優れていること」などが幸せだと考えていた生徒達が、授業後には「普通に生活できること」「人と比べることではなく、自分の心が決めていくこと」だと意見を変容させた。新聞記事を読んで考えることで、登場人物の庄兵衛の苦悩をより身近に感じることにもつながったのではないだろうか。しかし、新聞記事を使った資料集めには苦労をした。県立図書館まで出向かなければ、必要な記事が見つからなかった。今後、欲しい記事を手に入れる方法を確立することが課題である。

実践者名:燒津市立大村中学校 古谷 美佳