実践指定校実践例 2013年度

NIEの思想序章~「教育難民」を救済せよ~

神奈川県立座間総合高等学校(かながわけんりつざまそうごうこうとうがっこう)

教科、科目、領域

高校(高等専門学校を含む): 国語 、総合学習
学年 高校(高等専門学校を含む) 1年 、2年 、3年
「NIEで磨く国語力~『天声人語』からの常識問題~」を解く
高校における「教育難民」とは、小中の学習内容がほぼ抜けてしまっており、教科書という権威からはじかれた人々のことだ。その対策がねらいである。
生徒が関心を持つ内容の記事を題材にすること。エリートだけが興味関心を持つ性質の記事には注意を払い、大衆化した生徒にも対応できる工夫を忘れないこと。
新聞活用学習

「天声人語」を問題文とした「NIEで磨く国語力」を作成し授業内に解く。2013年4月~2014年2月までの、「天声人語」の内容分類は、1.人物17編「7/15マララさんの国連演説」等2.社会経済10編「12/2秘密情報保護法成立」等3.自然5編「10/17秋台風26号の脅威」4.文化13編「11/15新語・流行語大賞は」等。3年前から朝日Teacheras'メール記事活用例「NIEで磨く国語力」を週一回掲載しているのでぜひ(http://nie.asahi.com)を参照してみてください。

「国語総合」など国語科教科授業のなかで

〇次の文章を読み、後の問いに答えなさい。秘密法をごり押しした自民は「自暴(1)秘鬼(ひき)」の(あ)形相(  )、ブレーキ役の公明は「全面(2)公伏」とあいなって、目を転じれば東京都庁は「(3)知事滅裂」。住友生命が(い)コウボ(  )する創作四字熟語は11月が締め切りなので、(う)師走(  )のニュースを小欄がもじってみた▼続いては歳末(え)コウレイ(  )、本物の入選作で1年を振り返る。記憶に新しい夏の暑さ、「<A>危雨増大(きうぞうだい)」の異常気象に列島はたたられた。お隣の中国は大気汚染で「(4)景色朦朧(けしきもうろう)」に、ロシアでは「<B>落下露石(らっかろうせき)」。(お)隕石(  )が飛来して爆発し、世界を震わせた~以下略~。問一(あ)~(お)までのカタカナ部は漢字に、漢字は読み方を答えなさい。問二(1)~(4)の、もととなっている言葉を答えよう。問三傍線部<A><B>の、もとの四字熟語とその(もとの)意味を答えよう。問四例にならって、<x><Z>の創作四字熟語を説明しよう。〔例〕「優駿の美」(「有終の美」:アニメ宮崎監督が、優れた功績を残して引退。)<x>「JJ日々」<Z>「快投連将」。解答は省略します。

IT機器の浸透に伴い、活字を書く機会が減少し、漢字の読み書き(リテラシー)能力の低下がみられる。また、四字熟語、ことわざ、慣用句も苦手である。身近で使用しないからだ。漢字の読み方や語句の意味などを問う問題を扱うバラエティー番組の存在はそれを証明している。したがって、漢字の読み書き問題10題は必ず出題する。四字熟語も「天声人語」にはよく使われるので問題化するようにしている。

どんな内容を工夫していってもそれなりにこなしてしまう生徒ではなく、高校を勉強の場ではなく、異性友人との遊びの場、ファッション発表の場ととらえる「やんちゃ」な生徒に効果があるかを問題としている。少し古いが、「亀田興毅」のデビュー記事には、やんちゃの中心生徒が異常な集中での読みの姿勢を見せた。権威への反抗の姿が自分の生き方と感応したのだと思う。

「NIEに競合するものは教科書(許可書とはエリートが規定した教養や知識の標準である)」とのスタンスで、できれば大衆の言葉の自由を、その自己中心的性質に注意を払いながら、実践の狙いと効果をはっきりアピールできるような工夫をこころがけつつ追及していきたい。「NIEの思想」とは、教科書エリートとの対決にその本質を求められると考える。たとえば小説定番教材『山月記』『こころ』『舞姫』などの主人公のアイデンティティーはエリートである。まるでエリート以外の苦悩は無意味無価値と断じているかのようだ。しかし、世の中はエリート以外の構成員がほとんどである。人間ならだれでもが持つ生きる苦悩。教科書以外の記事から大衆化した生徒に生きる切実さを訴える記事を、選び生き方や考え方を訴えていきたい。

実践者名:神奈川県立座間総合高等学校 星野智也