実践指定校実践例 2013年度

ENIE・総合学習を通しての【労働】の尊さ・大切さ-社会学的見地からのNIE実践

国立小山工業高等専門学校(こくりつ おやまこうぎょうこうとうせんもんがっこう)

教科、科目、領域

中学校: 総合学習
高校(高等専門学校を含む): 外国語 、総合学習 、キャリア教育・進路指導
学年 高校(高等専門学校を含む) 3年 、4年 、5年
英語:時事英語演習 /  高等・中学校では「総合学習」にも適合する
「Cooperative Learning(協同学習):『時事英語』授業」:学生主体で教員が支援者となる「自主学習方法(Independent Study)」
日本語の新聞で内容の背景を読み取りながら、同時に英字新聞も活用することにより、英語による表現の仕方の違いや、英語の学習も並行して学ぶ
新聞活用学習

本実践は、「ENIE(English Newspaper in Education)」および【総合学習】(Integrated Studies) を通して【労働】の尊さ・大切さを訴えると共に、東日本大震災の【震災復興支援】を通してみる、【「正規雇用者」と「非正規雇用者」】との雇用に対する現状を把握しながら、【「歌」に含まれるメッセージ】についての内容の分析と、それを捉えた学習者の心理分析に関する一考察を提唱することを目的とする。

計3時限

第1時限:新聞紙上による「求人広告」の紹介(社会科:経済)の後、「労働讃歌(ももいろクローバーZ)」・「山谷ブルース」(岡林信康)の曲鑑賞と、感想を日本語で記載させた(音楽科・国語科)。その後労働現状報告と、20代の「非正規雇用」の現状と原因を究明しつつ(社会科:政治・経済・歴史)、「The Working Poor」・「Unemployment」の英語による定義と、世界の「失業率」の比較、また時代背景の考察を行った(英語科・経済・歴史)。
第2時限:前時の復習の後に歌詞の一節に出る「一握の砂」(石川啄木)の鑑賞(国語科)を行い、昭和40年代の「山谷」・「あいりん」地区の居住地と、平成20年代の若者の「滞在地」および両方の時代に共通する「居住地」の紹介を行った(社会学)。そして「平成における ホームレスの生活の実態」報告(社会科:社会学)をした後、「労働(Work, Job/Task, Business, Profession)」の定義を始めとして、尊さ・理解の確認をした(英語科・哲学・倫理学)。その後初日の2曲を再鑑賞し、感想を日本語と英語で記載させた(音楽科・国語科・英語科)。
第3時限:前時の復習の後、「勉強の歌」(森高千里)の曲を鑑賞して日本語と英語で感想を記載した(音楽科・国語科・英語科)。最後にアンケート調査の後、授業感想を日本語と英語で記させた。

一方的に語りっぱなし(講演・講義)になるのではなく、学生にも考えさせたり、共に音読をさせたりする相互通行の「授業」を行う事を取り決めとした。この手法は常に受け身となり、教員が教え、学生が習うといった「受け身」の体制ではなく、学生が主体となって授業を形成し、教員は支援者(Facilitator)になりながら、学生自らが「自立的に学ぶ方法(Independent Study)」の形式を取っている。

「働く事は大変で簡単な事ではないが、自分でできる事をしっかりとやりたい」や「【就職先】については考えた事があったが【働く】という事自体にそこまで意識をしたことがなかったので、よい機会になった」そして「自分の生き方や今後を考え直す題材はとても刺激的であった」という意見が多数寄せられた。「これまでに未知、無関心の事が、英字新聞の記事収集実践を通して興味が湧いた」といった感謝の意見も出た。


成果としては「労働授業」は学生自身が今後社会に巣立っていくに当たり、社会の厳しさと大変さを自覚しながらも、現状を見つめながらも前向きに進んでいこうとする意欲を生み出すことができたという点で効果的であることがわかった。今後はいっそう「英文記事」を中心としながら「新聞」に対して関心を広げさせるために、英字経済新聞を定期的に購読させて、日本の国内外における経済・社会情勢を、英語を通じて理解させる事を今後の主眼とする。その補足情報として経済紙や一般紙を活用し、より幅の広い「ENIE実践」を繰り広げていく所存である。ひいてはそれが社会人としての社会的教養を身に着ける手立てとなっていくものである事から、今後とも「ENIE実践」には邁進をしていく事を臨む。教科は「横断」が望ましい。英語から「社会情勢」を。

実践者名:国立小山工業高等専門学校 山西敏博 (准教授)