“先生”体験から考える

新聞が教育に必要とされるために

 「なぜ教科書ではなく、新聞を使わなければならないのか」。NIEに懐疑的な教師から、そう問われたとき、どう答えられるだろうか。

 「社会に関心を持たせる」ことが目的ならば、テレビやネットのニュースではダメなのか。「読解力や文章力が身に着く」という主張もある。しかし、教科書に掲載される有名作家の文章以上の記事が、どれほどあるのか。新聞を勧めるのであれば、具体的に活用するメリットや学習効果を挙げて、そうした疑問に答えていく必要がある。

 新聞が子どもの発達段階に即しているのかという課題もNIEにはつきまとう。授業で教壇に立つたびに、自分の説明が、どこまで理解されているのか不安になる。例えば、社会面や1面の記事を小学生に読ませようとしても、まだ習っていない用字用語が少なくない。もちろん取材現場は、そんなことを意識して記事を書かない。だが、NIEに携わり、こども新聞を作る人間ならば、当然意識しなければならないはずだ。

 読者センターには、小学校から中学校まで、各学年の教科書が置かれている。出前授業やこども新聞の対象となる子どもたちが、何を、どこまで学んでいるかを知るためだ。非常に面倒ではあるが、労を惜しんでは、子どもは新聞を難しく感じてしまうし、教師の信頼を得ることもできない。

 昨年4月から、小中学校の現役教師の協力を得て記事を使ったワークシートを作成し、ホームページで公開している。シートには、対象学年に応じた用字用語の解説も付けた。教師からは「使いやすい」と評価をいただいている。記者としてではなく、「先生」として教壇に立って、子どもたちと向かい合ったおかげで考えついたアイデアだ。

 地道だが、こうした取り組みを積み重ねることが、いつか「教師から信頼されるNIE」として実を結ぶと信じたい。

筆者・プロフィール

中原 克巳(なかはら・かつみ)
南日本新聞社 伊佐支局長(前読者局読者センター)

「新聞研究」2017年4月号掲載
※()内の肩書は執筆当時のもの