第7回いっしょに読もう!新聞コンクール
最優秀賞(高校生部門)・森亜理朱さんと出会った記事執筆者の思い

新聞が引き起こした想定外の反応

 ところが、その記事が森さんという一人の高校生の目に留まり、彼女が書いた感想文が第7回「いっしょに読もう! 新聞コンクール」の高校生部門最優秀賞に選ばれることになった。私の記事は、3回連載で分量が多く(全体で6千字程度)、主題的にも高校生になじみのあるものとは言いがたかった。本コンクールでは一般的に、新聞記者による報道記事が感想文の題材として選ばれ、寄稿文が選ばれることは少ないと聞いた。寄稿は筆者の意見が強く出るためなのだろう。だが、森さんの感想文は、母を亡くしたという自身の具体的な体験と、私の抽象的な論考とを架橋し、その内容を適切に消化したものとなっており、大変すばらしいものだった。

 それと同時に、何より私にとって印象的だったのは、この記事が、高校生という想定していなかった読者にまで届き、感想文という反応を引き起こしたという点であった。私は大学ではいわゆる人文系学部に所属し、自身の論考を発表する主たる媒体は、学術関係者のみを読者とする学術雑誌や、せいぜい、学術に関心のある読者層を想定した商業誌に限られている。そのため、新聞への寄稿に際しては、特殊な読者を想定せず、できるだけ分かりやすい内容と表現を心がけたつもりではあるが、それでも、雑誌とは桁の異なる読者数をもつ新聞の潜在性を、十分には理解できていなかったように思う。新聞に書いたものがどれだけ多くの人、多様な人に読まれるのかという事実の一端を、ようやく理解したというのが率直な印象である。

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