第3回いっしょに読もう! 新聞コンクール受賞作

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最優秀賞

小学生部門

新潟市立上所小学校 6年 手代木 慶(てしろぎ・けい)さん

意見を聞いた人 祖父、父
用いた記事

ピストリウス義足の挑戦
(毎日新聞 2012年8月4日付朝刊)

受賞理由

 この受賞作の評価点は、第一にピストリウス選手が投げかけた問題について、記事にある評価の相違を深く読み取り、また、祖父と父の意見の違いをしっかりと聞き取り、いかに考えたらよいのか自分なりに調べ、考察を深めていることである。第二に、選手の悩みも視野に入れて、自己の考えを提言している点である。この2点が、きわめて優れていると、全審査委員によって高く評価された。

 そこには、この問題について異なる評価を紹介した記事を選んだ手代木さんの着眼点、祖父・父の考えの相違を聞き取りながら、自分なりに考えようとしている探究心、オリンピック憲章の規定の適用によっては異なる評価も成り立ち得ると調べた考察力、ピストリウス選手の努力と苦悩を受け止める共感力や想像力、そして提案としてまとめる構想力など、どれをとっても優れていることが、如実に示されている。

受賞作内容

中学生部門

長野県佐久市立中込中学校 2年 細谷 夢子(ほそや・ゆめこ)さん

意見を聞いた人
用いた記事 子どもの目に映った「731」(上)(下)
(信濃毎日新聞 2012年8月15日付朝刊、同年8月22日付朝刊)
受賞理由

 この受賞作が評価された点は、戦時において加害者の立場に立たされた体験者がその体験を語る意味を現代の中学生なりに考察していることである。

 731部隊の関係者であるがゆえに、戦争体験を語り得なかった女性2人の重く、苦しい葛藤を伝えるこの記事に、今を生きる中学生の立場で率直に読み取り、考察している。個々の戦争体験を、個人では抵抗できない国家が推し進めた戦争政策の中に位置付け、個々の体験者がその責任を負うものではないとしながらも、加害体験も含めて戦争体験を語り継がなければならないと考えている。戦争とは何であったのかすべてを語り継がなければ、中学生にはわからないと、戦争体験を語り継ぐ意義を現代の中学生の立場から深めていることが評価された。

 記事は必ずしも戦争当時の状況を説明したものではない。だが、親が731部隊の一員であったという加害者性が強い背景をもった方々に対して、体験者の悩みと葛藤を中学生なりに考え、応えようとしている。当時の体験を想像し、共感しながら、戦争のない未来を共に創ろうとしているその率直性も評価された。このような戦争体験をどのように受け止めるのか、当事者に身を寄せながらも自身の考えが率直に語られていることが、このコンクールの趣旨に合致したものとして高く評価された。

受賞作内容

高校生部門

兵庫県立武庫荘総合高等学校 2年 山本 千裕(やまもと・ちひろ)さん

意見を聞いた人
用いた記事 ハワイと沖縄 ブタが繋いだ絆
(産経新聞 2012年8月16日付夕刊)
受賞理由

 ハワイと沖縄。思い浮かぶのは、青い海のリゾート地であろう。山本さんは、そこに「ブタ」が絡む意外性にひかれた。しかも、ハワイで「ビギンがコンサートで『音(おん)返し』」という見出しにさらに興味がかりたてられて、記事を読み深めている。

 この記事を読んだ母は、終戦直後の沖縄の様子とその中での、ハワイに住む沖縄移民のこの活動のありがたさと困難さを語ってくれた。筆者は、沖縄戦とその後の沖縄について多くを知らないことに気付き、もっと調べてみたいと思うようになっている。

 それだけでなく、戦後の日本が多くの人に支えられた事実を知り、さらに東日本大震災の際の多くの支援を思い浮かべ、今度は自分が支える側に立って貢献したいと思うようにもなる。そのためには、もっと新聞を読んで世界のことを知っていきたい、と考えるようになっている。

 自分の興味を手掛かりに記事を読み深め、そこから内面を成長させていくプロセスが素直に描かれていて、主体的に世の中に関わっていこうとする決意に高い評価が集まった。

受賞作内容