“先生”体験から考える

記者体験が新聞読者を育てる

 授業の中では、新聞を使わない。記者が直接教室に出向き、新聞を読むコツなどを子どもたちに教えることは、NIEの観点から効果的だと思う。ただ、この出前授業を担当するようになり、あえて新聞を使わない方法もあることに気づかされた。

 メモを取り、取材・インタビューをし、記事を書くという作業を体験した子どもたちは、新聞記者の仕事の大変さを実感し、そんな記者たちが作っている新聞に大きな関心を抱くようになる。授業が終わった後、子どもたちからサインをねだられることもある。記者の仕事を体験した子どもたちにとって、プロの記者である我々は「すごい人」なのだ。初めは違和感を覚え、断っていた。しかし、記者からサインをもらった体験が、出前授業をより思い出深いものにすると考え、素直に応じるようになった。

 「記者さんの仕事を体験して、これからは新聞を読んでみようと思いました」。授業後のアンケートで、最も多いのはそんな感想だ。

 先日、出前授業の大切さをあらためて実感する体験をした。都内の大学で開く、「現代社会と新聞」をテーマにした提携講座。その中で約80人の学生と、新聞の未来についてディスカッションした。

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