“先生”体験から考える

先生を驚かす“記事の奇跡”―記者とのふれあいが未来の読者を育てる

学生(右)とのかけ合いで「ことばの授業」を行う筆者

 「あの子があんなにたくさん文章を書いている姿を初めて見ました」。出前授業で訪れた小中学校の先生から驚かれることがよくある。そんなとき、返す言葉は決まっている。「きっと“記事の奇跡”が起きたんですね」

 読売新聞は2005年度から、「ことばの授業」という出前授業を行っている。NPO法人「企業教育研究会」(理事長=藤川大祐・千葉大教育学部教授)と共同開発したプログラムで、子どもたちに新聞記者の仕事を体験してもらいながら、「聞く」「書く」「伝える」コミュニケーション能力を養ってもらう。教員を志す学生と、我々プロの記者がペアを組み、2人のかけ合いで授業を進めていくのが特徴だ。

 「今日はみなさんに新聞記者になってもらいます」。授業は、学生のそんな一言から始まる。記者になるためのアイテムとして、取材メモ帳をプレゼントされた子どもたちの表情は、みるみる真剣味を帯びていく。メモを取るコツを教えた後、まずは取材をして記事を書くまでを実演して見せる。その際、記事を書くコツの一つに挙げるのが、「『思う』『らしい』は使わない」。記者は取材を通して明らかになった事実だけを記事にする。分かっていないことを、自分の考えや想像で補ってはいけない。その解説が、後半の記事執筆への布石となっているのだ。

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