“先生”体験から考える

教育に生かす記者経験

 最初は「修学旅行新聞を作るので教えてほしい」という中学校からの申し込みだった。「もっと新聞」キャンペーンの一環として、県内の学校に出向く「新聞づくり体験学習講座」を案内すると、学級新聞、社会科見学新聞、コメ作り新聞、職場体験新聞、地域調べ新聞など、体験や学習の成果をまとめるための新聞づくりのリクエストが多く寄せられた。教科でいうと、国語、社会、総合的な学習に関わってくる。新聞制作だけではない。高校、大学からの依頼も増えている。受験を見据えた小論文指導、選挙権年齢引き下げに伴う主権者教育、就活に役立つ情報の集め方など、新聞を入り口としたさまざまな依頼が舞い込むようになった。

 現行の学習指導要領に、言語活動の充実を図るための「新聞活用」が盛り込まれたことで、学校と新聞の距離は縮まっている。わが社では経験豊富なOB記者の方々の活躍で、2016年度は約60校、延べ4千人以上を対象に講座を実施した。

 私自身、当初は「教育に関しては素人なので、先生のお手伝いをさせていただこう」という控え目な姿勢だった。ところが最近では、新聞のノウハウを使えば教師とは違う教育的アプローチができるはず、などと厚かましくも考えている。人に話を聞き、伝えたいことを整理して記事を書き、価値判断して見出しをつける─記者活動のプロセスは、コミュニケーション力、思考力、文章力、表現力と直結しているからだ。

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