模擬授業「最後だとわかっていたなら」 3.11前に長野で

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模擬授業後に講演する光武正夫さん

模擬授業を受けた感想を述べる参加者

 長野県NIE研究会(会長・中村和彦白馬中学校長)は1月24日、信濃毎日新聞長野本社(長野市)で総会と研究会を開いた。研究会では、佐賀県多久市立東原庠舎(とうげんしょうしゃ)中央校副校長で日本新聞協会NIEアドバイザーの光武正夫さんが、模擬授業「最後だとわかっていたなら」を行い、長野県内の小中高校の教員ら30人余が参加した。

◆岩手日報社の広告企画を道徳の教材に

 「最後だとわかっていたなら」は、岩手日報社(盛岡市)が東日本大震災をテーマに2017年から続けている広告企画。光武さんは18年に岩手県で開かれたNIE全国大会でこの広告企画と出合って以来、新聞広告や関連の動画を教材にして道徳の授業を行ってきた。

 この日の模擬授業では、東日本大震災後に岩手県大槌町に設置された、線がつながっていない電話ボックスがモデルの絵本「かぜのでんわ」を朗読。そして、岩手日報社が制作した動画を視聴した。動画では、津波で亡くなった人の遺族が、最後となった故人との会話を思い出し、後悔などの心情を語っている。

◆御嶽山噴火災害の記事も活用

 参加者は予習として、東日本大震災で両親と妹を失った子どもの記事、また長野・岐阜県境にある御嶽山の御嶽山噴火災害(2014年)で両親を失った高校生の記事を読んでいた。予習用シートは、記事に登場した子どもは成長して看護師を志し、高校生は工業大学に進学したことを紹介。参加者は2人の立場になり、進路を決めた理由や亡くなった両親に「かぜのでんわ」で伝えたいことなどを書いた。

 最後は、「もし、『最後だとわかっていたなら』、あなたは誰にどんなことを伝えたいですか」「あなたは、卒業式(修了式)まで、どのように生きたいですか」といった問いの答えを考え、参加者同士で共有した。

◆参加者から「参観日に授業をしたい」の声

 光武さんは講演で、「死を意識することは、『生きる』を意識することではないか」と問いかけ、教科としての道徳には「心情だけでなく、心と知識をつなぐことがとても大事」と語った。新聞を活用した学習については「広告や動画、ウェブのコンテンツも活用できる。記者以外の新聞社社員、広告代理店の企画力もひっくるめて、一緒に授業を作っていってはどうか」と提案した。

 参加者からは「卒業を前にした参観日にこの授業を行いたい」「重い内容だからこそ、まず教員がしっかり学び、考えることが大切だと思った」といった感想が寄せられた。

 光武さんが行う実際の授業では、事前に生徒の家族に生徒宛ての手紙を書いてもらい、生徒も家族への手紙を書く。「最後だとわかっていたなら 教育プログラム」として、学習指導案と学習指導過程が岩手日報社のサイト(https://www.iwate-np.co.jp/content/taisetunahito-omouhi/school/)で公開されている。また、教材となる新聞広告や動画は、岩手日報社が無料で提供している。

植田典子 長野県NIE推進協議会事務局長(2026年2月3日)