出前授業で「多文化共生」考える 兵庫
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「多文化共生」を考えた出前授業
=兵庫県立伊川谷高校
今、外国人抜きに日本社会は語れない。在留外国人が増加する中、兵庫県内の中学校や高校で「多文化共生」をテーマにした出前授業が行われている。生徒たちに新聞記事などを通して、外国人住民が地域の一員として生きる方策を考えてもらっている。
9月22日、神戸市西区の伊川谷高校で、日本経済新聞神戸支社の海野太郎支局長による出前授業があり、3年生27人が参加した。
海野支局長は2023年、兵庫県立高校の卒業式でアフリカルーツの髪型で出席した男子生徒が校則違反に問われ、隔離された――などの記事を紹介。生徒に「多文化共生とは何か」と問いかけ、「まず、異なる文化や宗教を認める。迷いや試行錯誤の先に共生がある」と強調した。
今年7月の参院選でクローズアップされた「日本人ファースト」や、クルド人差別問題にも触れ、「『外国人の滞在増加で治安悪化』は、データをみると実態に沿った認識ではない」「ムードに流されず、事実やデータをもとに考えよう」と呼びかけた。
12月1日には、夜間中学の姫路市立あかつき中学校で、神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザーによる出前授業があり、ベトナムやフィリピンなどの出身者ら生徒32人が参加した。
同校は外国にルーツがあったり、家庭の事情などで十分に義務教育が受けられなかったりした10~90代の生徒が通う。
授業では、日本の四季について知ってほしいと、兵庫の秋を伝える新聞記事から気になるものを選び、感想などを書き加え、オリジナル新聞をつくってもらうワークショップを行った。書写山円教寺(姫路市書写)の紅葉や、竹田城跡(兵庫県朝来市和田山町竹田)の雲海が関心を集めた。
三好アドバイザーは日本との生活習慣の違いによるトラブルなどに触れ、「地域で受け入れ体制を整える必要がある」と指摘。人手不足で外国人労働者が急増する現状について「地域がにぎわい、外国人住民の考え方が地域の魅力を高める」と期待を込めた。
行政情報や災害情報を外国人が理解しやすい「やさしい日本語」で伝える自治体の動き、多文化主義を進める諸外国の動向なども解説した。
伊川谷高校、あかつき中学校ともに25年度の日本新聞協会のNIE実践指定校だ。今後もNIE授業を通し、喫緊の課題である「多文化共生」のあり方を生徒とともに考えていきたい。
三好正文(神戸新聞NIE・NIB推進部シニアアドバイザー)(2025年12月22日)





