第16回いっしょに読もう!新聞コンクール 最優秀賞(高校生部門)清武 琳さんへの記者からのメッセージ

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「付き添い入院」の過酷な実態、見過ごさないために

 きっかけは、読者の調査依頼に基づいて取材する「あなたの特命取材班」に寄せられた情報提供だった。「付き添いはひたすら我慢と忍耐の日々です」。福岡市の50代女性が、入院した子どもと一緒に泊まり込んでお世話をする「付き添い入院」の過酷な実態を訴えていた。重度障害がある子どもが入退院を繰り返し、女性も付き添いを求められた。食事の介助やおむつ変えなどに忙殺され、自身の食事は院内のコンビニで済ませ、狭い簡易ベッドで寝泊まりしたという。

同じ経験をした記者がチームを組んだ

 私自身、小学生の子どもに生まれつき心臓疾患があり、妻が付き添い入院で苦労した。当時、私の勤務地は病院から1時間以上かかり、車で毎日、妻の食料や生活必需品を運び、交代でミルクをつくった。ただ、付き添い入院の過酷さは過去にもたびたび指摘され、記事になっている。子どもの付き添い入院を体験した本田彩子記者や東京支社でこども家庭庁を担当した金澤皓介記者とチームを組んで、病院アンケートや読者に対する情報提供の呼びかけ、国などへの取材も行って、付き添い入院の実態をより詳しく紹介することにした。

 病院アンケートからは本来は任意であるはずの付き添い入院を病院側が求めていることが浮き彫りになり、読者からは「2日間で口にしたのはパン1つ」など深刻な体験談が寄せられた。一方で、国も病院も手をこまねいている訳ではないことが分かった。こども家庭庁は医療機関に付き添い家族用の簡易ベッドの購入費などを補助して負担軽減に乗り出しており、付き添い家族に病院食を提供したり、ボランティアによる育児支援を行ったりしていた病院もあった。

清武さんの行動に感じる頼もしさ

 今回、東福岡高校2年の清武琳さんが記事を読んで知り合いの綿谷千春さんにメールを送り、付き添い入院について考えを深められたことを知って大変うれしく思った。清武さん自身も当事者に近い立場でありながら、「もっと広い視野を持ち、多くの人の意見を聞かなければならない」と言及されており、その行動力や問題解決に向けた姿勢に頼もしさを感じた。

 私も今回の取材を通して、付き添い入院には人手不足や財源などの課題があり、一朝一夕には解決しないと感じた。そもそも付き添い入院の過酷さは、体験した人でないと分からない面もある。どうやって社会的課題と位置付け、議論を深めていけるのか。清武さんとも一緒に考えていければと思っている。

野村 創(西日本新聞社記者)(2025年12月8日)