第16回いっしょに読もう!新聞コンクール 最優秀賞(小学生部門)篠塚いろはさんへの記者からのメッセージ
- NIEトップ
- リポート NIEの現場から
- 第16回いっしょに読もう!新聞コンクール 最優秀賞(小学生部門)篠塚いろはさんへの記者からのメッセージ
揺れる稲穂の向こうに見えた課題と希望
朝は卵かけご飯、昼は牛丼、夜は焼き魚定食。私の毎日の食卓にコメは欠かせません。昨年から続くコメの値上がりには消費者の一人として気を揉んでいました。コメ作りの現状を知りたいと、福島県でコメ農家を営む渡辺市雄さんを取材しました。渡辺さんに話を聞くと、コメの値段は高騰しているものの、肥料や農業に使う機械も値上がりしているのでもうけは増えず、農家の多くは後継者がおらず高齢化も深刻だということがわかりました。それでも、「美しい田んぼを残したい」と奮闘する渡辺さんの心意気を伝えようと記事を書きました。
続けたかった田んぼ――高齢化する農家が見つめる現実
今回、受賞された行田市立桜ケ丘小学校5年(埼玉県行田市)の篠塚いろはさんは、私たちの記事をきっかけに、数年前までコメ作りをされていた祖父母に話をきいてくれました。印象的だったのは、「風にそよぐ稲穂がどこまでも続く景色を見ると疲れが吹き飛んだ」という言葉です。コメを消費するだけの私には知り得ない、コメづくりに真剣に向き合った人にしか見ることができない風景だと思います。篠塚さんの祖父母は手間の割に収入が少ないため、田んぼをやめてしまったそうです。「本当は田んぼを続けたかったのに、それが出来なかったと話していて、胸が痛みました」という篠塚さんの文章からは、社会問題を身近に感じ、どうにかできないかと真剣に心を寄せていることが伝わってきました。
農業への第一歩は"知ること"から
農家の高齢化や後継者不足などの構造的な問題をすぐに解決するのは、難しいことです。まずは若い世代がなぜ農業に関わりたがらないのかを考える必要があると思います。篠塚さんが提案してくれているように、学校で農業体験をしたり、「スマート農業」のような新しい技術を普及させたりすることは、若い世代が農業を知り、携わるきっかけを作ることになるのではないかと思いました。篠塚さんのように農業について真剣に考える若者が増えれば、問題解決の一歩になるかもしれません。
篠塚さんは田んぼを「日本の宝物」と書いてくれました。この宝物を残していくために記者として私には何ができるのか。篠塚さんの作品を読んで、私自身がそう問い返されていると思いました。
山口 優夢(読売新聞社社会部KODOMO新聞記者)(2025年12月8日)





