阪神・淡路30年、震災授業は続く 兵庫県NIE推進協
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阪神・淡路大震災30年をテーマに語る
産経新聞社の岸本佳子さん(左)と、
神戸新聞社の三好正文アドバイザー
=兵庫県西宮市宮前町、浜脇中学校
6434人が犠牲になり、3人が行方不明のままの阪神・淡路大震災は2025年1月17日で発生30年を迎えた。兵庫県NIE推進協議会が長年、兵庫県内外の学校で行っている「震災授業」はいまも続けられ、24年度の実施校は県内の小中高校11校に上った。当時、神戸などの被災地を取材した産経新聞と神戸新聞の記者によるコラボ授業や、当時まだ生まれていない神戸新聞の防災担当記者が講師を務めたケースもある。
2月26日、西宮市立浜脇中学校での授業は、産経新聞大阪本社編集局の岸本佳子夕刊編集長と神戸新聞NIE・NIB推進部の三好正文シニアアドバイザー(兵庫県NIE推進協議会事務局長)が講師を務めた。30年前、ともに記者として被災地取材に当たった。
岸本編集長は、被災者であふれる避難所や公衆電話に並ぶ人たちなど当時の写真を紹介。「震災で日常が一変した被災者の思いを届けなければ、と取材を続けた」と振り返った。震災報道を続ける意味として「24年元日の能登半島地震など、各地で災害が発生している。防災に関する新たな課題や阪神・淡路の教訓を伝えたい」と力を込めた。
三好アドバイザーは大震災当日、神戸・三宮にあった神戸新聞本社で宿直勤務だった。震度7の瞬間や被災地の惨状を説明し、「能登半島地震と阪神・淡路の光景が重なった。若い世代に記憶と教訓のバトンをつないでほしい」「多くの人命が助かったケースはよく『○○の奇跡』といわれるが、そこには伏線がある。日頃から共助を大切にしたい」と話した。
阪神・淡路の記憶と教訓を若い記者が受け継ぐことは大きな課題だ。1月21日、神戸海星女子学院小学校(神戸市灘区)での授業は、三好アドバイザーと神戸新聞で防災を担当する名倉あかり報道部記者(当時)が講師を務めた。
震災が起きた1995年生まれの名倉記者は、自身の名前に「暗い世の中を照らせるように」との思いが込められていると紹介。「まずは自分の命を大事にして、次の地震から身を守るために一緒に阪神・淡路の記憶をつなぎたい」と語った。
甲南小学校(神戸市東灘区)では、児童たちが被災時を想定し、防寒やプライバシー保護を考慮した段ボールハウスを作った。
このほか、出前授業では阪神・淡路の発生直後、ラジオ関西が神戸市長田区の火災現場から生中継した放送音源を紹介したり、事前に校内に当時の報道写真を掲示したりもしている。
災害の記憶が薄れる「30年限界説」が言われる中、さらに震災授業を続けたい――。いまは災害と災害の間を生きている「災間」なのだから。
◆兵庫県NIE推進協議会が行った24年度の震災授業一覧はこちら
三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(2025年3月17日)