第8回NIE教育フォーラム「学校教育におけるメディアリテラシー」を開催しました
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新聞協会は3月1日(土)、「学校教育におけるメディアリテラシー」をテーマに第8回NIE教育フォーラムをオンライン開催しました。関口修司NIEコーディネーターによる基調提言、梶田育代氏(朝日新聞東京本社校閲センターデスク)と朝倉一民氏(札幌国際大学教授、NIEアドバイザー)の講演に続き、関口コーディネーターの司会によるセッションを行い、小中高校の教員、教科書会社社員ら116人が視聴しました。
基調提言で関口コーディネーターは、メディアリテラシーについて「今回のフォーラムでは、メディア情報リテラシーとほぼ同義の『メディアや情報の特性を理解し、メディアなどから情報を収集し、吟味、選択、加工、発信、交流する能力』と定義したうえで進めたい」と提案しました。メディアリテラシー教育の大きな役割は、「正しいこと」が「快」であり、それが「善」であること(真正性、公益性、多様性、民主性など)に気付かせることだと述べました。
梶田氏は校閲記者の仕事について、「日々大量の原稿に向き合いながら、記者とは違う視点を意識して、文字や言葉の点検、正誤の確認など、客観的に記事を検証すること」と述べました。また、記事中に差別や偏見と読める表現があると、読者に新たに偏見を植えつけるうえに、会社がそうした意識を持っていると読者に受け取られ、会社の信用失墜につながるとし、「会社の危機管理を担っている部署でもある」と話しました。
朝倉氏は「メディアリテラシーは学校教育で育む必要がある資質能力の一つであり、学習指導要領の三つの柱(知識・技能=情報スキル、思考・判断=情報リテラシー・表現力、学びに向かう力・人間性=デジタルシチズンシップ)に重ね合わせて考えることが重要だ」と指摘しました。そのうえで、メディアリテラシーの技能を身につけるには、「まずは新聞やSNSといった情報の発信元の特性と、情報の流通の仕組みの理解が不可欠だ」と話しました。また、メディアリテラシーには批判的思考力が重要であり、その力を育むには、記事を基に子供同士で意見交換させるような取り組みを継続することが有効だと述べました。
受け手として情報を判断できるように育てる
3人によるセッションで、梶田氏は専用の校正支援システムを導入していることに触れ、「言葉遣いの誤りなどは指摘してくるが、原稿全体を通して『この言葉の使い方が本当に正しいか、本当に適切か』といった判断ができない」と指摘。広く使われるようになった生成AIについては、「インターネット上の真偽不明の情報を含む膨大なデータを機械学習した結果から出力する。まだまだ信頼できるものではなく、人間の手によるファクトチェックが必要不可欠だ」としました。朝倉氏は新聞社の情報は信頼性が高いとしつつも、学校教育で大切なのは「新聞社発信の情報だから正しい、個人発信だからあやしいと決めつけず、受け手として情報を判断できるように育てることだ」と強調。その感性を育てるにはNIEタイムのような活動を継続するといったことが必要だと述べました。また、メディアリテラシー教育の今後について、「校長が中心となって総合的な学習の時間のカリキュラムの中での位置づけを明確にしたうえで取り組む必要がある」と語りました。関口コーディネーターは「単なる知識ではない、教養と経験の蓄積とを合わせたものが、情報を判断する力の基盤になる」とまとめました。
日本新聞協会(2025年3月10日)