第15回いっしょに読もう!新聞コンクール 最優秀賞(高校生部門)柴田深冬さんへの記者からのメッセージ

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障害のある人も生きやすい社会に

 「コンサート手話通訳の存在をもっと社会に知らせてほしい」。聴覚障害のある都内の女性からこのようなメールをいただき、今回の取材に着手した。福岡市で開かれるコンサートに私も同行。女性は通訳のチケット代や交通費、宿泊代を負担していたが、記事で紹介したように、コンサート主催者側との認識の食い違いが生じたため、女性は会場入りを拒否した。女性は会場を離れた後、悔しさのあまり泣いていた。私はその涙を見て、彼女はきっと今回のような悔しい体験をいくつも重ねてきたんだろうと感じた。

当事者に思いはせる努力を

 私には聴覚障害のある親戚がいて、それをきっかけに聴覚障害や手話に関する記事を書くようになった。聴覚障害のある人たちは聞こえないからといって決して「かわいそう」な存在ではなく、彼らは誇りを持って生きている。問題なのはむしろ、当事者が生きづらい環境をつくっている社会の方だと思う。関連の記事を書くときは、これらの視点をいつも大切にして、読者に伝わるような書き方を心がけている。

 今回最優秀賞に輝いた東筑高校3年の柴田深冬さんが私の記事を通じて感じてくれたことを読み、記事に込めた思いが伝わったようでうれしかった。柴田さんが指摘するように、合理的配慮がいくら義務化されても、当事者に思いをはせる努力をし続けないと社会は変わらない。

 柴田さんにはぜひ自分の夢を実現させ、社会を変える一翼を担ってほしい。

梅本 邦明(西日本新聞社記者)(2024年12月9日)