身近な問題を考え、主権者意識を育む 東海ブロック会議
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東海ブロックNIEアドバイザー・NIE推進協議会事務局長会議は、6月15日(土)、中日新聞社(名古屋市)を会場に開催された。愛知、岐阜、三重、静岡各県のNIE推進協議会事務局長と各県のNIEアドバイザー、日本新聞協会の担当者計23人が集まった。
会長あいさつと推進協議会の取り組みと課題・展望
(1)開会のあいさつから
愛知県NIE推進協議会 土屋武志会長(愛知教育大学特別教授)
「学校でしか新聞に出合わない子も増えてきた。新聞は取材をし、チェックを受け、発行される質の高い情報だ。NIEを広めて子どもに確かな情報を届け、地域を見つめ直したり、世界を考えたりしてほしい」
(2)各推進協議会の取り組みと課題・展望
各県の主な活動、実践指定校へのサポート等の報告がなされた。各県でも、NIE実践の報告会等が毎年定期的に開催されていた。また、新聞の配置について教育行政への働きかけを粘り強く行っていかなくてはならないとの意見が出された。
テーマに沿った交流
(1)グループ討議 〔テーマ:主権者教育に新聞をどう生かすか〕
冒頭に日本新聞協会NIEコーディネーターの関口修司氏より基調提案を受け、グループに分かれて意見交換、交流した。
〈各グループの発表より〉
・興味を喚起するために新聞は有効。教科書の内容だけでなく今を知らせること。主権者として他者の考えを知ることが大切である。新聞を読んで意見を交流し新聞社に投稿する実践の紹介。よい読者を育てることこそよい主権者を育てることになる。NIEの実践そのものが主権者教育ではないか。
・地域に根ざした記事で地方自治を学ぶ。新聞を活用することで自分たちの考えをもつ。主権者教育とは、自ら考え参加すること。当事者意識、自己肯定感を高めながら地域の一員としての自覚を高める必要がある。
・小中高の発達段階に合わせた実践が報告された。世の中に興味関心をもってもらう。「変えることができるかもしれない」と思ってもらう。新聞を使って知り、新聞を使って発信することで主権者教育を行っていく。
新聞記事を用いて身近な問題をとらえ、自分事として考える力をつけていくこと、さらに大きな社会、国際関係など視野を広げていくことが主権者教育として大切なのではないかという意見が出された。地元密着の記事が多いのが新聞の強みである。地元を知ることで自己肯定感が上がる。身近なことから考えていくことがよりよい市民の育成につながるという事例を交えた発言もあった。
(2)まとめ
日本新聞協会NIEコーディネーター 関口修司氏
「主権者教育における記事のトリセツ」と題してグループ討議の冒頭とまとめでお話しいただいた。
・主権者教育のベースとなる「ボイテルスバッハ・コンセンサス」について説明があり、政治的中立を意識しながらNIEの実践を行うにはどうしたらよいかの示唆をいただいた。
・実践として大学1年生200人に行った衆議院東京15区補欠選挙の模擬選挙を報告いただいた。新聞記事で立候補者の主張を読んで、実際の選挙の前に模擬投票を行い、投票結果と比べてみた。模擬投票の結果と実際の選挙結果には差があり、学生からは「次は投票に行きたい」「もっといろんなところを見て決めたい」という感想が出された。
・NIEは主権者教育だけでなく、メディアリテラシー、SDGs、キャリア教育、国際理解教育、探究学習などいろんな学習に対応できる素晴らしい教材であることが紹介された。課題として、若手実践者の育成、教育の多忙化の問題、ICTの活用、実践指定校を終了後にどのように実践をつないでいくのか考える必要があることを示唆いただいた。
NIEの魅力は、校種、専門教科を超えて実践者と交流し話ができることだ。それぞれ状況が違えど、粘り強く実践を続けている先生方にお目にかかるとエネルギーをもらい、次の実践の大きな糧となる。自分自身、日々の実践を大切にしていきたいと思いを新たにした。
河村 智美(愛知県刈谷市立雁が音中学校主幹教諭/日本新聞協会NIEアドバイザー)(2024年7月10日)