「子どもたちとメディアリテラシー フェイクに惑わされないために」広島県NIE公開セミナー

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広島県NIEセミナーで講演する読売大阪・中沢氏

 広島県NIE推進協議会のセミナーが2024年2月4日に広島市中区の中国新聞ビルで開かれ、 読売新聞大阪本社役員室地域戦略部次長(元大阪本社社会部次長)の中沢直紀氏が講演した。教員や中高生60人が参加し耳をかたむけた。千葉県など他府県からの参加もあり、講演後に意見交換も行った。

 中沢氏は、読売新聞大阪社会部で事件取材、企業不正などの調査報道を担当。2021年から同紙に長期連載された「虚実のはざま」では取材班の責任者も務めた。この連載は大きな反響があり『情報パンデミック あなたを惑わすものの正体』(中央公論新社)として書籍化もされている。

 当日は、第1部で「情報パンデミックに向き合う知恵」をテーマに取材した経験をもとに講演された。「ネット空間に、本物っぽいものがあふれ、 何が真実で何がウソなのか境界線があいまいになっている今こそ、人間は『見たいものを見ようとする』という脳の癖を知ること、そして、そんな人間に『見たいものしか見せないようにする』ネット特有の仕組みを知り、情報の偏食に陥らないように意識していくことが重要だ」と語り、学校での情報リテラシー教育の必要性を訴えた。
 講演を聞いた高校生から「アメリカ大統領選では有権者はフェイクを信じて投票したのか」「賛成意見と反対意見をどう書き分けるのか」などの質問も活発に出された。

 第2部では、中沢氏と新聞コンクール受賞者の中高生や教職員を交えて「子どもたちに聞く ネット活用の今」をテーマにクロストークを行った。
 登壇した中高生は、「ネットは、手軽で便利、過去の記事も簡単にさかのぼって見られる」半面「保存期間が短くずっとそこにあるわけではない、玉石混交である」ことに言及し、探究の調べ方や日々の生活においても気を付けていきたいと話していた。

 参加者からは「大変活気と学びのあるセミナーだった。普段のちょっとした意思決定の際も、拠り所や根拠となる情報の情報源の正当性に注意するとともに、自分自身の選択基準にも敏感でありたいと感じた。まだ判断力が十分とは言えない小・中学生には、このことをふまえ、授業で情報リテラシーを今まで以上に丁寧に指導する必要がある」(中学校教員)などの感想があった。

 今回のセミナーは大変貴重な機会であった。「一方的な意見に流されず、都合の良い考えを性急に求めず、様々な立場から冷静に物事を見る」という今の時代に合わせたリテラシー(読み解く力)を、NIEにおいて育成していきたい。

坂口 直美(日本新聞協会NIEアドバイザー)(2024年2月8日)