第14回いっしょに読もう!新聞コンクール 最優秀賞(小学生部門)高田彩楽さんへの記者からのメッセージ

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コミュニケーションを通じ互いに歩み寄れる社会を

 「子どもの遊ぶ声 騒音ですか」。私たちは今年8月、こんな問いについて読者と一緒に考える記事を掲載しました。日常生活で耳にする子どもの声や学校から響く音。同じ地域には静かに暮らしたい人もいるなか、どうすれば「騒音」トラブルにならず、共生できるのか探りたいと考えたからです。

 広島市の安田学園安田小学校5年生、高田彩楽さんは記事を読み、普段の生活を振り返りながら考えてくれました。公園で遊ぶ子どもの声を不快に思う人がいると記事で知り、高田さんは「私も公園で遊んでいるときの声が騒音になっているかもしれない、と心配になった」と言います。

 聞こえてくる音を騒音と感じるかどうかは、個人の感覚の違いやその時々の状況によって変わります。騒音問題の専門家も記事の中でこう指摘しています。「うるささとは、音の大きさだけでなく、自分の心理状態や相手との関係を通してフラストレーションを感じるかどうかだ」。

 記事で紹介した高校の事例でも、生徒と地域住民の交流が深まったことで、吹奏楽部の演奏や部活のボールの音といった学校から聞こえてくる音に対して、地域住民の感じ方が変わりました。音を出す側の配慮は必要ですが、取材を通じて感じたのは日頃のコミュニケーションの大切さです。

様々な意見に耳を傾ける

 高田さんはお母様との対話で考えを深め、日頃のあいさつや地域活動への参加などで地域の人と交流し、「どんな子どもたちなのか知ってもらうことで声に対する感じ方は異なってくるのでは、と考えた」と意見をまとめてくれました。

 今回の取材班には、子育て中の記者が多くいました。外で自分の子どもの大声にヒヤッとした経験もあれば、怒鳴られてモヤッとした経験もあります。身近なテーマかつ、人によって音の受け止め方は様々。SNSを通じて読者とつながる私たちの「#ニュース4U」にも、多くのご意見や体験が寄せられました。

 「異なる立場や考えの人たちとも、コミュニケーションをとって、互いに歩み寄れる社会が作れたらいいな、と思った」。高田さんは感想の最後をこう締めくくっていました。

 私たち記者の問題意識や社会に届けたかったメッセージを、小学生の高田さんが当事者として一緒に考えてくれたことをうれしく思います。新聞を前に親子で対話する高田さんとお母様の姿を想像して、温かい気持ちになりました。

平井 恵美(朝日新聞社記者)(2023年12月11日)