NIEの可能性探る 宮崎市で第1回NIE宮崎県大会
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パネルディスカッションなどで
NIEの可能性を探った第1回NIE宮崎県大会
宮崎県内でのNIE普及や発展を目指す「第1回NIE宮崎県大会」が2023年8月19日、宮崎市の宮日会館であった。県NIE推進協議会(水永正憲会長)主催。県内の教諭ら教育関係者約70人が参加し、パネルディスカッションやワークショップを通じて教育現場で新聞を活用する取り組みを共有、NIEの魅力や可能性について理解を深めた。
昨年のNIE全国大会(日本新聞協会主催)が宮崎県で開かれたのを機に初開催。水永会長は「情報発信を積み重ねていくことが大事。議論を深め、県全域にNIEが広がることを願っている」とあいさつ。黒木淳一郎県教育長は「NIEには未来や社会への扉がたくさんある。キャリア教育との親和性も高く、成長の手だてにもなる」と述べた。
実践例を報告 パネルディスカッション
「NIEのススメ」と題したパネルディスカッションでは、新聞を授業や学習に生かしている県内の教員4人が登壇。コラムを音読し要約する実践例や記事の感想をまとめる取り組みなどが紹介された。
各界で活躍する著名人が中学生へメッセージを送る共同通信配信企画「14歳の君へ」の感想文を書かせている事例では、「生徒から『他の人の生き方を読み取り、どう感じたのか言葉にすることが楽しくなった』といった声が上がった。この学びは他の分野にも生きている。人と対話をする際にも生かされている」と報告があった。
小学5、6年生の国語の授業でタブレットを使い6分以内に宮崎日日新聞のコラム「くろしお」を音読し、100字に要約する取り組みの報告もあった。報告したパネリストは「きっかけは音読力、語彙(ごい)力、要約力を鍛えれば、読解力が向上すると考えたから。最初はほとんどの児童が要約できなかったが、3カ月後には9割方できるようになった。クラスの学力テストの結果は、全教科で成績が上がった。この取り組みの結果だと思っている。地元紙のコラムを読むことで地域に関する知識が豊富になり、タイピングが速くなるなど付加価値も生まれた」と述べた。
参加者からは「先生方が楽しくNIEを実践しているので、その楽しさが子どもたちに伝わっている。ずっと続けていくことが大事だ。今回発表されたどの事例でも、子どもたち同士の学び合いがあればもっと面白くなる。新聞を使うことには、いろいろな可能性があると改めて感じている」と感想があった。
模擬授業で新聞活用の意義を確認
NIE全国大会松山大会の参加報告や、東日本大震災を題材にした模擬授業などもあった。
模擬授業では、宮崎市・宮崎西高付属中の木幡佳子教頭(日本新聞協会NIEアドバイザー)が、震災後の地元の新聞記事や写真を基に「津波の被害に遭った町役場を保存するか、解体するか」という岩手県大槌町で実際に起きた議論を紹介。来場者に町民の立場で賛否を考えるよう求めた。その上で賛否それぞれの意見を発表してもらった。
木幡教頭は「新聞には子どもたちに考えてほしい題材がたくさん載っている。子どもの感性を豊かにするアイテム」と説明。「物事を『自分ごと』として捉え、深く考える力を養う」と新聞を使った授業の意義を訴えた。
子どもたちを磨くNIE
日本新聞協会NIEコーディネーター関口修司さんの大会講話もあった。関口さんは「新聞の購読数が減少していることは事実だが、NIEに取り組む子どもたちが増えていることは喜ばしい。NIEは子どもたちの学力を上げるだけではなく、心と言葉、人間関係を磨く。生徒はもちろん、教師の視野も広くなる」と述べ、「NIEの有効な取り組みとして、記事の要約と見出しづくりを推奨したい。新聞記事の「見出し」は究極の要約。これらに加えて、記事に対する自分の意見を書き出すことを繰り返せば、論理的な文章力・読解力・思考力が身につく」と提言した。
大会参加者のアンケートではパネルディスカッションとワークショップのプログラムに好意的な意見が多かった。また参加者の8割超が内容に満足しており、得られた内容が期待に適ったと答えた。
福重 政則(宮崎県NIE推進協議会)(2023年9月7日)