子どもの感性を育むNIEについて意見交換 近畿ブロック会議

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 824日(木)、朝日新聞大阪本社にて、近畿6府県の協議会から19人が参加し、「近畿ブロックNIEアドバイザー会議・NIE事務局長会議」(日本新聞協会主催)が開かれた。

Ⅰ 推進協議会の取り組みと課題・展望

各協議会からの報告、質疑

 各府県ともアドバイザーが中心となり、NIE入門講座や研究会、セミナー、コンクールの開催、公開授業を通してNIEの裾野を広げている。奈良県からは、奈良県立香芝高等学校表現探究コースの取り組みが紹介された。カリキュラムにNIEを積極的に取り入れ、「記者トレ」を中心に情報活用能力、言語能力、課題解決能力の向上を目指している。来年度NIE全国大会が開かれる京都は、これまでの課題や全国大会後も見据えた持続可能な活動に取り組んでいる。スローガンを「探究と対話を深めるNIE デジタル・多様性社会の学びに生かす」とし、着実に準備を進めていた。

Ⅱ テーマに沿った交流「AIの深化とメディアリテラシー」

1) 基調提言

 日本新聞協会の関口修司NIEコーディネーターから基調提言があった。メディアリテラシーに注目しすぎると、NIEから離れてしまうかもしれないと前置きしつつ、AI台頭の社会で「どう教育に生かすか?」「どうNIEに生かすか」と問いかけられた。つまり、人間を超えた能力をもつAIをどのように活用するかということである。教育に限らず社会全体への問いのようにも感じた。AIの苦手な部分(経験・体験を通した学びはできない/自己表現や批判的思考、創造性が培われない)にも触れ、「問う、問いを重ねる」ことの重要性と必要性を提言された。その前提として、メディアリテラシーの向上をあげた。正しい情報を収集・選択・活用するためにはどのようなことに気をつければよいのか。ヒントとして、フェイクニュースへの免疫力をつけることが提案された。免疫力を備え「情報的に健康な体」を育むために、日常的に学習で新聞を活用すること。何よりも日常的に、新聞を読む生活習慣を身につけさせることの重要性について指摘があった。

2) グループ討議

 3グループに分かれ、テーマに沿って活発な意見交流を行った。私が参加したグループでは、AIにできない体験・経験の部分に着目し、子どもたちの感性を育むことのできる最後のとりでが学校教育である、という共通理解のもと話し合いを進めた。「AISNSだけの世界が中心になると、体験、経験が欠落しているものに頼りすぎることになるため、非常に危険である」ということは、グループ内の意見として一致していた。例えば、ネット世代の記者が取材に行かなくても分かった気になってしまう。事前の準備や予備知識は大事だが、やはり対面で取材し、五感を通して記事を書くことの大切さをどのように伝えたらよいのかという意見もあった。また、基礎的な学習が十分なされていない中で、実践が少ない若い先生たちがネットやAIのような便利なものに頼りすぎると、教員としての教養(危機管理含む)を身に付けることや、子どもの感性を育むことが難しいという意見もあった。NIEに取り組む生徒について好事例の紹介もあった。中学生が鉄道会社に「SDGs18番目をどう設定しますか?」問いかけた。中学生が、「鉄道会社なら『世界に鉄道を通し、幸せな世界を築く』と言ってほしい」とも発言したという。その質問力、思考力に驚きを隠せない。討議の最後には、待てない子どもや大人が増えているこの時代、「(SNS等で流行しているショートムービーのような)15秒では分からない世界があることを知ってほしい」という意見でグループの討議は締めくくられた。

 まとめ

 関口コーディネーターからNIEの普及について、まとめていただいた。NIEアドバイザーがもっと活用されるべきではないか。地域、保護者にもっと周知し連携していくべきではないか。多様なモデル校を増やしていくべきではないか――など、様々な提案があった。また、本物の新聞に学ぶことを最終的なゴールとし、NIEの3領域「新聞機能」「新聞活用」「新聞製作」にバランス良く取り組むこと、調べ学習におけるデジタルとアナログの違いを知ることの大切さに触れ、最後に「NIEが教員を育てる」と締めくくった。

 会議に参加して

 最初から最後まで学びの多い会議であった。各府県のアドバイザーの先生方の実践や普及活動には、児童生徒の感性を育むための工夫がたくさん施されていた。討議で私の意見を伝えると、それぞれの立場から多様な視点での分析や助言をいただいた。何と有意義な時間であったことか。今から次回の会議が非常に楽しみである。

 各府県共通の課題として挙がったのは、「NIEの普及」であった。NIEの実践は、根気と継続が必要であり、教育全体がそうであるように、児童生徒の学びの成果がすぐに表れるものではない。だが、メディアリテラシーも含めて新聞を使った教育が社会性豊かな青少年の育成や活字文化と民主主義社会の発展に大きく寄与することは、先人のNIEの積み重ねから鑑みて明らかである。「15秒では分からない世界」にこそ教育の本質があり、NIEはその世界へ誘う最適な教育活動であることを私は確信している。そのためにもNIEを教員にも、家庭にも、地域にも広めていきたい。

中村 友弥(奈良市立朱雀小学校教諭/日本新聞協会NIEアドバイザー)(2023年9月4日)