同世代が書いた3・11を教材に 西宮市立浜脇中学校

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「震災伝承新聞」を読む西宮市立浜脇中
学校の生徒=同市宮前町

 宮城県内の中学生が東日本大震災の被災地を取材してまとめた「震災伝承新聞」を活用した授業が3月13日、兵庫県西宮市立浜脇中学校であった。震災伝承新聞は、河北新報社(仙台市)が取り組む「今できることプロジェクト」の一環で、今回は、仙台市立八乙女(やおとめ)中学校▽多賀城市立東豊中学校▽名取市立閖上(ゆりあげ)小中学校の計26人が記事を書いた。浜脇中学校は西宮市教育委員会を通じて取り寄せ、1、2年生約80人が記事を読み、感想をまとめた。行方不明の妻を捜すため潜水士の資格を取った男性、つらくて話せなかった体験を語り始めた大学生――。生徒たちが大震災発生から12年がたった被災地に思いを寄せた。授業を担当した先生2人に、授業のねらいや感想などを寄稿してもらった。



◆浜脇中学校 野上耕佑教諭
 「震災伝承新聞」を用いて授業を行いました。ねらいは、この新聞を通して、発行した宮城県の中学生たちの思いや伝えたかったことについて考えさせることです。授業では、各中学校の新聞を班で分担して読み、彼らが伝えたかったことについて考え、最後にホワイトボードを用いて発表しました。

 生徒たちは、宮城県の中学生たちが記憶が定かではない頃に起こった東日本大震災を「自分ごと」として考え、後世にバトンをつなごうとしている姿を通し、自分たちは何ができるのか真剣に考えていました。

 それは、日頃からNIE教育を進めている浜脇中学校の生徒にとって、新聞という媒体が身近であり、そこから彼らの思いを読み解こうという姿勢が見られたからだと思います。これまでのNIE教育の手法が活用できた場だったので前向きに進めることができ、生徒の成長が感じられました。



◆浜脇中学校 西村哲教諭
 2年生は、2時間設定で授業を計画しました。第1時は、東日本大震災当時の新聞各紙を読み込んでいきました。3月12日~20日頃の実物の新聞を手にし、食い入るように読んでいる姿、印象的な記事を見つけて隣の生徒と語り合う姿、どういう状況の写真や見出しなのか問いかける姿がありました。

 第2時に、「震災伝承新聞」を読み込んでいきました。第1時に読んだ記事から12年が経過した現在の様子や取り組みを知り、復興の進捗に感心するとともに、12年がたっても消えない痛みや悲しみを知り、「まだ震災は終わっていないのだ」とつづった生徒もいました。

 自分たちのNIEと他校のNIEという視点で興味を抱いた生徒、自らの生徒会活動と結びつけて考える生徒もいました。知識としての「震災」から、語り継ぐ「伝承」、そして「今、私たちができること」へと学びを深めていきました。

※同校は2023年度から、日本新聞協会のNIE実践指定校に決まっています。

三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(2023年3月30日)