高校生が小学生に教える「震災」  兵庫・須磨友が丘高×横尾小

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災害時の救助活動について意見を発表
する高校生と小学生=横尾小学校

 28年前、阪神・淡路大震災について新聞各紙がどう報じたかを、高校生が小学生に伝える授業が1月23日、神戸市須磨区の横尾小学校であった。児童は、倒壊した建物や救助活動、避難所生活、復旧が進まないライフラインなどの記事を読み、「災害時に自分ならどう行動するか」を考えた。

 同じ須磨区にある兵庫県立須磨友が丘高校1、2年の16人が横尾小の5年生46人に教えた。日本新聞協会のNIE実践指定校の両校が企画した「小高連携授業」。兵庫県NIE推進協議会による公開授業として行われ、市内外の教育関係者約20人が見学した。

 高校生たちは、朝日、毎日、読売、産経、神戸新聞各紙から気になる記事を選び、「がれきの中にいる人にどう声をかけるか」「小学生は避難所でどんな助け合いができるか」「水がなくなったらどうする」などの問いを設定。児童たちは班ごとに付箋に回答を書き、模造紙に貼っていった。

 震災の日の、ラジオの放送記録を題材に、被災者に情報を届け続けることの重要性――ライフラインとしての「情報」について考えた班もあった。

 須磨友が丘高2年の大久保遼矢さん(17)は「小学生が積極的に意見を出してくれた。震災の記憶を伝える側にならないといけないと感じた」、同2年の濱田優さん(17)は「震災の記憶を風化させないというのは、当時のつらい体験を無駄にしないことだと思う。児童のみなさんにはきょう学んだことをほかの人に伝えてほしい」と話した。
横尾小5年の堀口羽菜さん(11)は「災害時は避難所に缶詰を持っていこうと思った。これからも防災について考えたい」と話していた。

 「阪神・淡路大震災の記憶の継承」は大きな課題だ。4人に1人が震災後生まれになった兵庫県で、体験世代が担ってきた継承活動を、若者たちが語り部となって、どうつないでいくか。

 そのとき、高校生が「発信する側」――震災の記憶を語り継ぐ側になってくれたら心強い。須磨友が丘高校の生徒たちは、間もなく発生から12年になる東日本大震災についても学習を続けてきた。その学びは授業の中で十分に生かされていた。生徒たちは教えることの難しさを感じながらも、児童たちと和やかで有意義な時間を過ごしたようだ。取り組みが継続、さらに発展していくことを願う。


◆実践された須磨友が丘高校・岩本和也教諭の寄稿(授業のめあてや感想、今後の展望)はこちら

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三好 正文(兵庫県NIE推進協議会事務局長)(2023年1月25日)