NIEアドバイザーが集い情報交換 北海道・東北ブロック会議
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9月17日、河北新報社・本館1階ホールで、北海道・東北地区のNIEアドバイザーら26人が参加し、ブロック会議が行われた(新聞協会主催)。コロナ禍の中、アドバイザーも推進協議会も創意工夫を重ね、「NIEを止めない」という思いがひしひしと伝わってきた。願わくば会合だけに留まらず、さらなる懇親を深めたいと思った。次回(2年後に岩手県で開催)で実現できる状況になっていてほしいものだ。
会議冒頭、田辺泰宏・宮城県NIE委員会副会長(仙台市立荒町小学校校長)が「東京電力福島第一原発を視察し、どのようにこの現状を伝えていくかを考えた時、真っ先に思い浮かんだのが新聞だった」とあいさつした。新聞は、記者が取材し、時間をかけて正確に、多面的かつ奥深く事実を伝えている。これを授業で使用することがNIEの使命だと感じた。
続いて、推進協議会の取り組みや課題・展望について、各地の事務局長が報告した。主な内容は以下のとおり。
北海道:活動の柱は道内でのNIEセミナーの開催で、主に公開授業と実践報告をセットで行っている。ここ数年はオンライン開催が基本で、公開授業を事前録画し配信している。広大な道内をつなぐ上で、オンライン会議システムは有効なツールだ。
青森県:8月に宮崎市で開催されたNIE全国大会にNIEアドバイザーをはじめとする実践教師を派遣、レベルの高い取り組みを学ぶことができた。学校からの出前授業の要請には協議会加盟の各社で対応。校内研修などもあわせて多くの学校で実施している。
岩手:コロナ禍で思うように取り組めていない事業もあるが、記者の出前授業はコロナ対策をして、ほぼ通常通り実施できている。また小規模研修会にNIEアドバイザーを派遣するなど、新聞を好きになってもらえるような視点で地道に取り組んでいる。
宮城:実践指定校を希望する学校が徐々に増えている。全国大会宮崎大会への参加を機に、積極的にNIEに取り組むようになった教師もいる。各校の実践を紹介し合うオンライン研究会のほか、出前講座を実施している。
秋田:2015年の全国大会(秋田)を契機に県南地区で勉強会ができ、「学習会」と名称変更して活動を継続している。県北地区でも同様の会の計画があるほか、今年度からNIE活動に必要な費用を実践者に補助することにした。
山形:実践指定校教諭の組織化に向け、他県のノウハウを学びたい。実践指定校の期間終了後も、継続してNIEに取り組んでもらう手立てがあれば理想だと考えている。
福島:11月に予定されている県教育委員会の研究会「ふくしま教育創造コンソーシアム」に、NIEアドバイザーによる実践事例を報告する。また、希望する学校にアドバイザーを派遣しているが、最近は主権者教育に関する相談が多い。
▼社会的課題に迫るNIE目指す
テーマに沿った交流会では、日本新聞協会の関口修司・NIEコーディネーターから「社会に開かれた教育課程とNIE」と題する基調提言で、子供自身の生活と社会のつながりを新聞で実感させ、学びを社会のために生かす取り組みが大事であるとの提起があった。
続いて、行われたグループ討議では、「生徒の投書が新聞に掲載されれば、生徒はやりがいになるし、地域は学校の取り組みを知ることができる。やる気になった生徒が社会的課題に取り組み、解決につながれば理想だ」などの意見が出された。
▼新聞閲読の生活習慣を
最後に関口修司コーディネーターから、今回のグループ交流のまとめと助言があった。NIEを推進していく上での課題として①教材の内容、②指導方法、③組織、④環境整備、⑤機会の創出――の5つの観点が提起された。概要は以下のとおり。
現状、紙の新聞は教師にも子供にも身近ではなく、読まれていない。教師は多忙だが、今、子供に新聞を読む面白さを伝えなければ、新聞に触れる機会が失われてしまう。新聞を読む生活習慣を作ることが大切だ。
新聞を準備する方法としては、学校に届くものを利用したり、家庭から持ち寄ったりするのもよいが、学校で予算化したり、教材費を集めて教材用価格で購入することもできる。SDGsも主権者教育も高校で始めるのではなく、小学生からやるべきだ。日常の中で社会に関心を持ち、自分の生活が社会、ひいては政治に結びついていることを小学生のときから伝えなくてはならない。キャリア教育や防災教育、地方創生や地域活性化、少子高齢化、戦争、原発などのSDGsにない現代的な課題を、新聞を通して教科横断的に洗い出し、学ばせる必要もある。新聞を読み比べることが大事であり、気づくことも多い。ワークシートの活用もよいが、それだけでは不十分で、最終的には自分で新聞を開いて、自分で記事を選んで読むことが大切だ。
小・中学校で紙の新聞の有用性を伝え、同時にデジタルの便利さも伝えながら、子供に選択肢を与えることが必要である。これからのNIEは、子供が記事を探して選ぶという体験的な活動となることが理想だ。紙面で知ったことを、体験を通してさらなる学びへとつなげたい。そのためにも、校内でNIEコーナーを作ったり、朝学習を行ったりして、NIEの環境を整備してもらいたい。カリキュラムに無理やり位置付けるのではなく、授業の一部、あるいは最初と最後に新聞を使うだけでもよい。無理のない範囲で続けてほしい。
大槻 欣史(宮城県仙台二華高等学校教諭/日本新聞協会NIEアドバイザー)(2022年10月6日)